2020/11/1 20:36

 大学の街・京都で30分間の皿洗いをした学生に無料で食事をふるまってきた「餃子の王将」出町店(京都市上京区)が31日、最後の営業日を迎え、別れを惜しむ多くの客が訪れた。


最後の営業日を迎え、多くの客が訪れた餃子の王将出町店=10月31日、京都市上京区(渡辺恭晃撮影)
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 名物店長の井上定博さん(70)は自身が若い頃に食費に苦労した経験から、約40年にわたり、苦学生を対象に皿洗いを条件に無償で食事を提供。「自分が助けた学生が大人になったとき、また若い人を助ける。そうすれば世の中がよくなっていく」との思いで、これまでに3万食以上をふるまってきた。

 だが、今年でフランチャイズオーナーの定年を迎え、やむなく看板を下ろすことに。閉店が報じられると、かつて皿洗いした学生たちが全国各地から連日訪れた。

 最終日のこの日は、開店前から約10人が店の前に列をつくり、11時すぎの営業開始後すぐに満席に。井上さんはいつもと変わらない手つきで中華鍋を握り、次々に入る注文をさばいていた。横浜市から始発列車で駆け付けたという会社員、山作政嗣(やまさく・まさし)さん(39)は「お金のない大学時代、皿洗いをさせてもらい、ごちそうしてくれた店長は恩人。思い出の店がなくなるのは寂しい」と話した。

 井上さんは40年の思い出をかみしめながらこう語る。「最後にたくさんのお客さんが来てくれてうれしい。自分の料理でお客さんの心が豊かになってくれ、やってきたことが正解だったと実感でき、晴れやかな気持ちで退職を迎えられた」

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