製薬会社ファイザーによると、同社が開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチン候補には、
90%の効果があるという。つまり、接種者のほとんどに予防効果があるということだ。

この結果が真実であれば、世界中の企業と学校を閉鎖に追い込んだ新型コロナウイルスのパンデミックから脱出する出口が見えてきたことになる。
ただし、2021年に入ってもしばらくはワクチンの供給量は限られる可能性が高い。つまり、ほとんどの人は、このワクチンをすぐに接種することはできない。

大規模な治験が実施されているワクチンは十数種類あるが、4万人以上が参加するファイザーの治験が最初に結果を出した。
「今日は科学にとってすばらしい日であり、人類にとってすばらしい日です。開発中のワクチン候補に90%の有効性が出たとは驚きです」。

ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は米ニュース専門放送局CNBCのインタビューで語った。「トンネルの先に光が見えてきました」。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、規制当局がデータを確認する必要はあるものの、
同社は今月中にもワクチンの販売許可を申請できる見通しだという。ファイザーは11月9日のプレスリリースで暫定結果を発表したが、治験の完全なデータは公表していない。

「これは本当に優れた結果です。並外れた結果です」。米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウシ所長はワシントンポスト紙でこう語った。

いくつかの企業は、米政府主導のワクチン開発プロジェクト「ワープ・スピード作戦」の一環として大規模な治験を実施するために国の資金提供を受けたが、
それとは別に独自に治験を実施したファイザーが結局、競争に打ち勝った。

ファイザーは7月に、1億回分のワクチンを19億5000万ドル、つまり1回の投与あたり20ドル弱の費用で米政府に販売することに合意しており、
他の国々と同様の販売契約を結んでいる。米国は最終的に最大6億回分を購入する権利を持っている。

RNAワクチンの欠点の1つは、超低温で保管する必要があり、配布が困難なことだ。生産が面倒でもある。

ファイザーは2020年末までに供給できるワクチンは約2000万人分のみだと発表した。
同社は2021年末までには接種13億回分を供給できると見込んでいる。1人2回接種すると考えると、約6億5000万人分だ。

同社が主張する90%の有効性とは、感染者のほぼすべてがプラセボ接種者であり、ワクチン接種者も少数感染したことを意味する。
「これは本当に驚異的な数値です」とイェール大学の免疫学者である岩崎明子教授はニューヨーク・タイムズ紙に語った。

この秋、ファイザーと同社のブーラCEOは、良好な結果を時期尚早に発表したり、大統領選挙投票日前に
ワクチンの承認を急いだりしないようにという大きな圧力を受けた。このキャンペーンはカリフォルニア州サンディエゴのスクリプス研究所に勤める
エリック・トポル医師を含む医師グループが公けに主導したものであり、医師グループは、臨床試験データがホワイトハウスによって政治的に利用されることを懸念していた。

結局、ファイザーはデータの公表を遅らせることを選択したが、その決定自体が政治への影響を与えた可能性がある。

今回ファイザーが発表した結果が非常に優れていたことを考えると、10月下旬にすでに良好なデータが出ていたと思われる。
その時期に良好なニュースを発表していれば、ドナルド・トランプ大統領とジョー・バイデン候補者が戦った大統領選挙の投票に影響を与えたかもしれない。
https://www.technologyreview.jp/s/224672/pfizer-covid-19-vaccine-is-highly-effective-but-dont-expect-to-get-it-soon/