【シリコンバレー=佐藤浩実】米国で新型コロナウイルス感染の勢いが増している。15日までの1週間で、新たに100万人超の感染が判明した。重症化して入院する人も増えており、病床逼迫への懸念も高まる。11月下旬の感謝祭を前に行動制限を強める地域も広がるが、政権移行の混迷がコロナ対策に「空白」を生むリスクもある。

米ジョンズ・ホプキンス大によると、米東部時間15日午後10時(日本時間16日正午)時点で米国の累計感染者数は約1103万人だった。9日に1千万人を超えてから1週間足らずで100万人増えた。

10月16日に800万人に達した後、10月30日に900万人まで100万人増えるのには約半月かかっていたが、気温の下がる冬を迎え、増加ペースが急になっている。累計死者数は15日までに24万6200人を超えた。

直近1週間の特徴は幅広い州で感染が増えていることだ。米国の感染状況を分析する「COVIDトラックキング・プロジェクト」の15日の集計によると、56の州・地域のうち7割にあたる39カ所で1日あたりの新規感染者数(7日移動平均)が過去最多となった。人口の多い西部カリフォルニア州のほか、オハイオやミシガンといった中西部の州の増加が目立つ。

気温が下がって風通しの悪い屋内で集まる機会が増えたほか、11月3日の大統領選の前後に出歩く人が増えたことが背景とみられる。トランプ大統領の支持者集会などでは、マスクを着けていない人も目立った。15日時点の入院患者数は6万9864人に達し、コロナ感染が拡大して以降で最も高い水準にある。春に多くの人が亡くなる要因となった病床不足への警戒が強まっている。

全米各地で経済活動の再開をいったん止めたり、巻き戻したりする動きが広がっている。15日にはミシガン州が、18日から3週間にわたりレストランの屋内での飲食を禁止すると決めた。大学や高校での対面授業も中断させる。西部ワシントン州も同日に屋内飲食への規制を発表した。

行動制限が長期化すれば、米国経済への影響は深刻さを増す。大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領にとっても、コロナ対策は最優先の課題だ。9日に公衆衛生や感染症の専門家ら13人からなるコロナ対策チームを発足。「(対策に)全力を尽くす」と表明している。

トランプ政権でコロナ対策を担う国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は15日、米CNNの取材で「(新政権への)移行プロセスは情報をスムーズに引き渡すうえで非常に重要だ」と指摘した。「当たり前のことだが、彼ら(=バイデン氏のチーム)と協力できるほうがよい」と話した。

ただ、トランプ氏は同日も「私は全く敗北を受け入れていない!」とツイッターに投稿している。政権移行の混迷がコロナ対策の足かせになる恐れがある。

2020/11/16 14:31
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66266620W0A111C2EA1000/