青森県内でリンゴの収穫が盛んになり、農家にとってリンゴが盗まれないか神経を使う季節となった。今年は18日までに県内で5件の盗難事件が発生し、計約2350個(約13万7500円)の被害が出た。被害件数は過去5年で最多だった2018年に並んだ。野積みしないことの徹底や防犯カメラの設置など、農家らはさまざまな対策を施すが被害はなくならず、「対策には限界がある」など諦めの声も聞かれる。

 「丹精込めて作ったリンゴなので悔しい」。10月1日、青森市浪岡のリンゴ畑で約600個を盗まれた小笠原利彦さん(59)はこう打ち明けた。リンゴは箱に入れ、野積みしていた。「今後は小屋に入れて鍵をかける」と誓った。

 黒石市の黒石観光りんご園社長の佐藤国雄さん(67)は収穫後すぐに選果場に持って行くことを徹底している。30年ほど前に野積みしていた約5箱を盗まれた教訓だ。「被害額は1万円程度だったがとても気持ち悪かった。とにかく野積みをしないことが大事」。その後、被害に遭っていないという。

 しかし佐藤さんは「(野積みをやめても)もぎ取られるものは対策のしようがない」と話す。防犯カメラによる監視は有効なように見えるが、電源を準備する負担が大きい。「ましてや監視のため畑にずっと人を置くことは不可能。個人では対策の限界がある」と言い切る。

 16〜18年に相次いで被害に遭った黒石市の神孝成さん(46)は、他の農家から被害の相談を受けると必ず「警察に被害届をしっかり出した方が良い」と助言するという。しかし「忙しいから」「被害が少ないから」などと多くの農家が遠慮して被害届を出さないのが現状だ。

 神さんは「カメラを付けても壊されてリンゴが盗まれることもある。それでも農家が強気に物を言わないとリンゴ盗難は止まらない」と強調する。

 県警によると、今年の被害額や個数は15年以降だと18年に次ぐ多さ。県警捜査1課の担当者は「生産者にとって負担になると思うが、被害が出たら被害届を出してほしい。発生状況が正確につかめ、対策も取りやすくなる」と呼び掛けた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2cc49df912c22044c64135cc005c51270f138d47
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