オバマ氏、トランプ氏に投票したヒスパニック有権者を批判
2020年11月26日 17:48

バラク・オバマ前米大統領は25日、ラジオ番組に出演し、大統領選でドナルド・トランプ大統領に投票したヒスパニック(ラティーノ、中南米系)の有権者の中には、トランプ氏の「人種差別」的な発言を無視して、自分たちに大事な人工妊娠中絶反対などのテーマを優先させた人たちがいると批判した。

ポッドキャスト番組「ブレックファスト・クラブ」に出演したオバマ氏は、メキシコとの国境沿いで違法移民を金網製の「ケージ(おり)」に収容するトランプ政権の移民対策も批判した。違法移民をケージに一時的に収容する対策は、オバマ政権で始まったもの。

今回の大統領選の出口調査によると、トランプ氏は2016年の前回大統領選よりもヒスパニック票を多く獲得した。トランプ氏は4年前はヒスパニック票の28%を得たが、今回は32%に増えた。

今回の大統領選では、事前には激戦州のフロリダ州とテキサス州を民主党が奪還する可能性がしきりに取りざたされたが、実際にはどちらもトランプ氏が前回に続いて勝利した。出口調査によると、フロリダ州やテキサス州ではバイデン氏が白人有権者の民主党支持を伸ばしたのに対し、トランプ氏が2016年に比べて中南米をルーツとするラティーノ市民の支持を大幅に拡大したのが、今回の結果につながったとみられる。


オバマ氏の発言は

オバマ氏は番組で、「多くのヒスパニックの人がトランプ氏に投票したことに、大勢が驚いている。けれども、福音主義派のヒスパニックの多くには、トランプ氏がメキシコ人について差別的なことを言ったり、拘束した違法移民をおりに入れたりしても、それより、同性婚や妊娠中絶について自分たちと同じ意見だという方が大事なんだ」と述べた。


オバマ氏はさらに、トランプ氏が率いる共和党は、白人男性に被害者意識を植え付けようとしたと述べた。

「共和党の政治は、白人男性は被害者意識なんだという意識を作り出した。攻撃されているのは自分たちだと。もちろんそれは、歴史やデータや経済の実情と食い違っているけれども」

オバマ氏は発売間もない自分の新しい自伝「A Promised Land(約束された土地)」の宣伝を兼ねて、番組に出演していた。


発言の背景は

同性婚について言及したオバマ氏が、具体的に何を念頭においていたかは不明だ。2016年に初当選して間もなく、トランプ氏は同性婚合法化の最高裁判決について、自分は「それで構わない」と発言していた。ただしその前年には、米CNNに自分は「伝統的な結婚」に賛成だと述べていた。

オバマ氏自身は、2008年に大統領に初当選した当時は同性婚に反対していた。その後、2012年には支持すると述べていた。

今回の大統領選で、性的少数者(LGBT)の有権者のうち、28%がトランプ氏に投票したとされる。共和党の大統領候補が得た割合としては、2000年のジョージ・W・ブッシュ氏以降、最も多い。
オバマ氏が「ケージ」と述べたのは、トランプ政権の厳しい移民政策の一環で、メキシコ国境沿いで拘束された不法移民や難民申請者の家族が子供と大人に分けられ、金網製のケージに収容されたことへの言及だった。

しかし、金網製の収容設備が作られたのは、オバマ政権下でのことだった。オバマ政権中の2014年夏だけでも、保護者のいない未成年約6万人がメキシコとの国境で拘束され、収容された。
オバマ政権も、移民家族の子供を親から引き離したことはあるが、オバマ政権ではこれは珍しい措置だった。

トランプ氏は2015年6月に大統領選に出馬すると発表した際、メキシコからの不法移民について、「連中は麻薬を持ち込む。連中は犯罪を持ち込む。連中は強姦犯だ。一部は、おそらく、良い人なんだろう」と発言。この発言は以来、批判され続けている。


発言への反応は

共和党の世論調査担当、フランク・ランツ氏はオバマ氏の発言について、「こういう雑で怠慢な分析が、『自分たちを支持しない連中は、偏見にまみれている』と、彼の支持者の間の一般認識になるんだろう」とツイートした。

(英語記事 Obama criticises Hispanic voters who picked Trump)

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https://www.bbc.com/japanese/55083601.amp