新型コロナウイルスの感染拡大で、死者数も今春の「第1波」に迫りつつある。26日には29人の死亡が確認され、過去最多の31人(5月2日)に次ぐ多さとなった。重症者増で医療現場の負荷は高まっており、医療の質の維持が急務だ。


北海道では27日に過去最多となる9人が死亡した。増減傾向を把握しやすい7日移動平均でみると、26日には全国で15.7人となり、2週間前より7割多い水準。8月末の第2波のピークの13.8人を超えている。

直近1カ月の死者の約6割を80代以上が占め、70代が約2割、60代が約1割。50代以下は4%程度にとどまる。

死者増の主な要因は重症者の増加だ。大阪府の担当者は「第2波に比べ、重症化しやすい高齢者の感染が多い」という。各地の高齢者施設などでクラスター(感染者集団)が多発しているほか、家庭内感染で高齢者に広がるケースもある。

全体でみれば、これまで日本は死者数を抑え込んできた。厚生労働省によると、日本の死亡率は6月下旬に5.4%に達した後は低下傾向が続き、今月25日時点で1.4%。米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、米英など欧米諸国は2〜3%台で、日本は低い水準といえる。

多数の死者が出ている海外に比べ、日本では第1波や第2波で感染爆発や医療崩壊にまで至らず、死者が比較的少なかったためだ。

ただ感染者や重症者が大幅に増えれば検査や医療の現場で目詰まりが起き、死者が急増する恐れは消えない。

コンサルティング会社、ジャッグジャパン(東京・渋谷)が収集した全国の感染者のデータなどによると、発症から検査確定までの平均日数は、11月初旬は全国で4日を下回っていたが、直近は5日を超えた。北海道と大阪府では特に60歳以上で日数の増加が顕著で、6日に近い値という。

国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は「高齢者などで発症から7日を超えて受診する人が目立ってきた」という。現場で目詰まりが広がっている可能性がある。

重症者数も26日には前日比25人増の435人と、過去最高を更新した。重症者は治療が長期化しやすく、医療機関の大きな負荷につながる。

ECMO(体外式膜型人工肺)治療に携わる医療従事者でつくる「日本COVID-19対策ECMOnet」の集計では、ECMOを使う治療の日数は最多は「6〜10日」だが、「21日以上」も2番目に多い。治療の間、多くの医療従事者の手が必要になる。

国際医療福祉大学の和田耕治教授(公衆衛生学)は「感染拡大が深刻な地域では病床も逼迫している。このままだと重症化しても入る病院がない状況になりかねない」として、早期に感染拡大を食い止めることが死者を抑える上でも急務だと指摘している。

日本経済新聞 2020/11/27 20:55
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66760670X21C20A1EA1000/