総務省が1日発表した10月の労働力調査は、就業者数が前年同月比93万人減の6694万人で、10年10カ月ぶりの減少幅だった。新型コロナウイルスの感染長期化で雇用の悪化が続いており、「第3波」が状況をさらに深刻化させる懸念も出ている。(渥美龍太)
◆正規9万人増加の一方で…
 雇用の形態別に見ると、正規労働者の同9万人増に対し、非正規労働者は85万人減と8カ月連続の減少。産業別では、非正規比率が高い宿泊・飲食サービス業が43万人減で、10カ月連続の減少だった。
 季節的な要因を除いた「季節調整値」の就業者数は、前月比で3万人増とほぼ横ばい。ただ、緊急事態宣言が出た4月に107万人も急減した後、元の水準に戻っていない。

 コロナ前は企業が人手不足で高齢者や女性を短時間労働者として数多く採用し、就業者数は増加傾向にあった。「本来は増えるところが大幅に減っており、見かけ以上に深刻」(エコノミスト)との見方がある。
◆完全失業者数も8万人増、失業率も悪化
 完全失業者数(季節調整値)は前月から8万人増の214万人。完全失業率(同)は同0.1ポイント上昇の3.1%と、2カ月ぶりの悪化だった。日本総研の山田久氏は「今後半年ほどは、3%台後半に向けて上昇していく」と予測する。
 政府は、雇用を維持した企業に補助する「雇用調整助成金」の特例措置を来年2月末まで2カ月延長する。連合の神津里季生会長は1日の記者会見で「特例で雇用をつないでいるのが実情だ」と危機感を示した。
◆介護、農業などに労働移動が必要
 ただ、旅行業界などは雇用を維持しても、業績の回復に時間がかかる。山田氏は「人手不足の介護や農業などの業界に労働移動を促す政策も必要になる」と指摘する。

東京新聞 2020年12月2日 05時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/71755