【ワシントン時事】米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は1日、中国が「次世代技術の開発独占や標準化を目指している」と強い懸念を示す年次報告書を公表した。新技術の独占を通じ、経済や地政学的利益を追求していると指摘。「中国の意図を過小評価すれば自由な国際秩序を守るための対応が遅きに失するリスクを招く」と警鐘を鳴らした。
香港への国家安全維持法導入など、中国が国際規範やルールに縛られずに影響力拡大や覇権への野望をむき出しにしつつあると訴える内容。米国に根付く対中不信の強さを改めて浮き彫りにし、来年1月に発足するバイデン次期政権に米中関係の課題を突き付けた形だ。
 
報告書は「中国は2020年、国際機関や地域を自国の意向に従わせるという野心をさらけ出し、覇権を目指す姿勢を激化させた」と強調。米国が擁護する自由な民主主義を「根本的な障害」と捉え、他国に自在に影響力を行使できる新しい国際体制の構築を狙っていると断じた。
 
その一環として、国際電気通信連合(ITU)など国際規格設定機関のトップに中国人を送り込み、自国に有利な次世代技術の基準作りで主導権を握ろうとしていると指摘した。巨大経済圏構想「一帯一路」に基づき、通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)による次世代通信規格「5G」のインフラ整備で、各国を取り込む狙いがあるとも分析した。
 
新型コロナウイルス対策では、パンデミック(世界的流行)を利用し、医療機器などの提供により「責任と善意のある国際的リーダー」として振る舞おうとしたと強調。各国が混乱に陥る中で、台湾や隣国を軍事的に威圧する一方、中国を批判するオーストラリアなどには牛肉の輸入制限などの経済報復を行ったと批判した。

2020年12月02日00時54分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020120200021