栃木県佐野市で2018年、生後2カ月の長男レオンちゃんを殺害したとして殺人罪に問われた母親で無職、石橋景子被告(41)=足利市田中町=の裁判員裁判で宇都宮地裁(岡田健彦裁判長)は7日、懲役9年(求刑・懲役12年)の判決を言い渡した。

 岡田裁判長は、「育児によるストレスなどに耐えきれなくなった末に犯行に及んでおり、同情できる面もある」とした上で、「もともと愛情が乏しく、邪魔な存在とみていたことが犯行に大きく影響しており、自己中心的だ」と述べた。

 判決によると、石橋被告は18年8月2日ごろ、当時住んでいた佐野市内の自宅で、レオンちゃんの頭に拳や手のひらを強く押しつけるなどして殺害した。【玉井滉大】

周囲に悩み打ち明けられず
 「被告人を懲役9年に処す」

 岡田裁判長が判決文を読み上げると、石橋被告は小柄な体を震わせ、うつむいた。未熟児で生まれたレオンちゃんと暮らしたのは、退院後のわずか10日間。石橋被告が携帯電話につけていた日記には、レオンちゃんの誕生を喜ぶ一方、孤独な育児に疲れいらだちを募らせる様子がつづられていた。

 裁判での証言などによると、石橋被告は職場の同僚だったバングラデシュ国籍の20代の夫(事件当時は内縁関係)と2017年1月ごろに交際を開始。結婚や妊娠は望んでいなかったが、同年冬ごろ妊娠の兆候に気づいた。だが病院へは行かず、夫や実母にも打ち明けなかった。石橋被告は「母親は世間体を気にするので、外国人との結婚は反対すると思った。子どもは自分の自由を奪う存在だと思っていた」と当時の心境を振り返った。

 初めて受診したのは18年5月。既に妊娠8カ月になっていた。だが受診を機に妊娠を知った夫が喜んでくれたことや、おなかの胎動を感じ、少しずつ出産を前向きに考えられるようになったという。

 同月末、切迫早産の疑いで入院し、レオンちゃんを出産した。1744グラムの未熟児だった。携帯電話につけていた日記には、「(生まれてきてくれて)良かった」「無事に赤ちゃん誕生」などと記していた。法廷でも石橋被告は「元気に産声をあげて生まれてきてくれてかわいいと思った。頑張って育てないとという気持ちになった」と語った。

 だが、出産から2カ月後の7月下旬、レオンちゃんが退院したころから日記に再び不満を書き連ねるようになる。

 「流産すればよかった」

 「何度もほほをたたいてしまう。死んでくれたらいいのに」

 「愛情が持てない」

 退院後、夫は仕事で忙しく頼ることはできなかった。ミルクをあげても、おむつを替えても、あやしてもレオンちゃんは泣きやまない。「なぜ泣いているのか。どうしていいのか分からない。元の自由な生活に戻りたい」

https://mainichi.jp/articles/20201207/k00/00m/040/221000c