二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて企業や消費者に経済的な負担を求める制度「カーボンプライシング」(炭素の価格付け)について、小泉進次郎環境相は11日の閣議後記者会見で、導入に向けて年明けにも環境省の有識者会議で議論を再開する方針を示した。小泉氏は「カーボンニュートラル(排出実質ゼロ)に資する方向で制度設計を考えたい。これは環境省が主導していく」と述べた。

カーボンプライシングには、石油や天然ガス、石炭などの化石燃料にCO2排出量に応じた税を課す「炭素税」や、企業間でCO2排出枠を取引する「排出量取引」などがある。環境省によると、欧州を中心に60以上の国と地域で導入が進む。

 菅義偉首相は2050年までにCO2など温室効果ガスの国内排出量を実質ゼロにすると宣言。脱炭素を成長戦略の柱に位置づけ、新技術開発などを支援し投資を後押しする方針だ。10日に自民・公明両党が決定した21年度与党税制改正大綱でも、脱炭素化に向けた設備投資を行った企業の法人税を、投資額の最大10%控除することなどを盛り込んだ。

 だが小泉氏は「投資優遇だけで(目標)達成はできない」とCO2削減には不十分との認識を示し、カーボンプライシング制度導入の必要性を強調。今後、制度設計の具体的な議論を進める中で国民や経済界の理解を得る努力をしていくとした。

 温室効果ガス削減策としてのカーボンプライシングを検討する環境省の有識者会議は18年7月に発足した。だが、学識者や環境団体の委員が推進を主張したのに対し、経済界出身の委員は経済成長を妨げると慎重な姿勢を示すなど意見の隔たりが大きかった。このため昨年7月の中間整理は、論点を整理し「経済・社会にどのような影響をもたらすのか、定量的な議論が重要」とするにとどまり、その後は1年以上開催されていなかった。

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