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国安法違反で起訴された蘋果日報の創業者、黎智英。台湾の独立派もこうなるのか? Tyrone Siu-REUTERS

<「非平和的再統一」に備えよと、強硬派の法学者が主張>

中国政府は台湾向けの「国家安全維持法(国安法)」を起草し、台湾の「非平和的再統一」に向けた準備をすべきだ――台湾問題をめぐる中国国内のセミナーで上がった声だ。

発言の主は北京航空航天大学の田飛龍(ティエン・フェイロン)准教授。法学者で、今年6月30日に香港で施行された国安法を強く支持している。田は香港での教訓を台湾問題に応用する機は熟したとも述べた。

香港の中国評論通信社によれば、田は河南省信陽で開催された台湾問題に関するセミナーに招待された110人を超える学者の1人だ。

セミナーは中国政府系の団体が主催したもので、田は「一国二制度」モデルの下での香港統治で得られた知見は中国政府にとって、「台湾問題」打開に向けて非常に重要な意味を持つだろうと述べた。

香港国安法は国家への反逆や扇動、分離独立や外国勢力との共謀を禁じている。また、台湾の独立運動を抑止するような条文も含まれていると田は主張した。

中国政府は台湾国安法の起草に向けて必要な手続きを開始すべきだと田は述べた。また、台湾の「非平和的再統一」の下準備として2005年に制定された中国の反国家分裂法の改正も提案した。

台湾併合への強い意欲示す習近平

その中では、台湾の独立運動に関与した個人や団体に対する制裁も必要になるだろう。田は「極端な分離独立勢力」や「外国の干渉」を抑止するための選択肢として「正当化され厳密な」制裁の実施のための関連法の改正も挙げた。

中国政府内にはすでに、台湾の独立派指導者たちの「ブラックリスト」を作成する動きがある。詳細は不明だが、複数の報道によれば台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統らが含まれる可能性が高いという。田の発言は、こうした中国政府の動きと軌を一にしている。

習近平国家主席は、何が何でも台湾を併合しようという中国政府の姿勢を明らかにしている。香港や新疆ウイグル自治区ではある程度、国安法が順守されていると見られることから、アナリストたちは中国にとって台湾がアジア太平洋地域の支配を固めるための最後のハードルになっていると語る。

もはや台湾海峡における今後のいかなる事態の展開も中国政府の手の内にあると田は述べた。

田は台湾でどのように国安法に効力を持たせるのかについてまでは踏み込まなかった。だが非平和的再統一を視野に入れていることから、軍事征服とセットで国安法制定を考えている可能性もうかがえる。

本誌は田にコメントを求めた。

香港では6月30日の施行以降、国安法に違反したとして40人あまりが逮捕された。だが起訴されたのは4人に止まっている。

11日、香港警察は「蘋果日報」(アップル・デイリー)の創業者、黎智英(ジミー・ライ)(73)が起訴されたと明らかにした。蘋果日報は台湾と香港で発行されており、反中国政府的な姿勢で知られる新聞だ。

中国南部・広州出身の黎は中国共産党に批判的な発言で知られる。アメリカに対し、国安法への対応としての制裁措置を呼びかけてきた。そうした発言自体、国安法の違反に相当する。

昨年7月に黎はアメリカのマイク・ペンス副大統領やマイク・ポンペオ国務長官と香港問題を話し合った。トランプ米政権は今年に入り、中国と香港の高官を対象に制裁を発動している。

田は11日、共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙「環球時報」に対し、黎は終身刑になる可能性があると述べた。

Newsweek 2020年12月14日(月)18時01分 ジョン・フェン
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/12/post-95183.php