閉鎖された「自己破産・特別清算・再生データベース」のトップ画面。氏名や住所で検索可能と書かれていた(画像の一部にモザイクをかけています)
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破産決定の書類を手にする男性。「破産情報のネット公開はやめてほしい」と訴える=2020年8月27日、大阪市(画像の一部にモザイクをかけています)
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閉鎖されたモンスターマップのトップ画面。画面下部には「フィクションです」とした上で、掲載されている個人は実在する個人と一切関係ないと書かれていた
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 法令を公布する国の機関誌「官報」掲載の自己破産者の個人情報を、無断転載したとみられるサイトが二つあった。誰でも見ることができる状態になっており、掲載者が削除を求めると仮想通貨を要求することも。政府の個人情報保護委員会が閉鎖を求める初の停止命令を出したところ、両サイトは閉鎖。しかし過去にも同様のケースがあり、破産者らは今後も繰り返されるのではと懸念する。

 関係者によると、閉鎖したのは「モンスターマップ」と「自己破産・特別清算・再生 データベース」。両サイトには計数万人分の破産者の名前と住所が掲載され、再生データベースは検索も可能だった。インターネット版官報を無断転載したとみられる。

 委員会は昨年10月、両サイトの存在を把握。「破産情報を出されて就職できなかった」「周りにいつ気づかれるか不安」など、少なくとも数百件の相談が寄せられた。再生データベースについては、「問い合わせフォームで削除を求めると、仮想通貨を送るよう求められた」という複数の相談も。この際要求された仮想通貨は数万円分だった。

 委員会は、個人情報保護法違反と判断。両サイトともサーバー事業者の拠点が海外にあり、運営者の特定は出来なかったが、問い合わせフォームやサーバー事業者などを通じて今年4月に両サイトを閉鎖するよう勧告した。しかし対応はなく、7月末に委員会発足後初の停止命令を出した。応じない場合は刑事告発する方針だったが、両サイトは8月に閉鎖した。

 破産者の個人情報をめぐっては、名前と住所を地図に落とし込んだ別のサイト「破産者マップ」が委員会に行政指導を受けた後の昨年3月に閉鎖。その後今回の両サイトが出現した。(後藤泰良、市原研吾)

■別のサイトが現れないか… つきまとう不安

 関西に住む会社員の女性(34)は昨年、生まれてくる子どもの姓名判断のため自分の名前を調べたところ、自分の破産情報がインターネットのサイトに載っていることを知った。

 20歳の頃、着物を70万円ほどで強引に買わされた。「返したい」と、販売会社と交渉中にその会社が倒産。数回、ローンを払ったが、そこから請求もなくなったため、放置した。十数年経ち、結婚して妊娠がわかったころ、債権回収業者に延滞金を含め約100万円を請求された。「子どもを抱えて借金を払い続ける気力はない」。法テラスで相談し、破産を選択した。

 「不利益は、カードを作れないとか、そんな程度だと思っていた」。サイトには、旧姓や旧住所も掲載されていた。そういえば、産休に入るまで喜んでくれていた元上司や同僚からの連絡は途絶えている。「気づかれたんだ」。そう思うと友人とも疎遠に。社交的な性格だったが、家に引きこもりがちになった。

 ようやく破産情報を公開していたサイトが閉じ、名前が出なくなったことは知っている。だが官報には掲載されたまま。また別な手法で公開するサイトが出てこないか、不安がつきまとう。子どもは無事に生まれ、破産を知らない「ママ友」もできたが、今も姓は明かせず、名前だけを名乗っている。

朝日新聞デジタル 12/20(日) 5:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20201220-00000002-asahi-soci