今やカフェでのおしゃれなランチや、家庭でのこだわりカレーのお供に欠かせない「タイ米」。しかし、1993年に起きた『平成の米騒動』の時はあまり日本人の口に合わなかったといいます。その理由は一体何だったのでしょうか。そして、そんな「タイ米」に再びスポットがあたるきっかけとなった出来事とは? 日本におけるタイ料理研究家の草分け的存在である、氏家アマラー昭子さんに話を伺いました。

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そもそも、タイ米は日本米と何が違うのか?
世界にはお米の種類がいくつかありますが、日本のお米は「ジャポニカ米」という品種に分類され、一粒一粒が丸く粘りがあります。一方、タイ米は世界で生産量の多い「インディカ米」という品種で、長細く粘りが少ないのが特徴です。日本米のほうが粘り気がある分、満腹感を得やすく、腹持ちがいい気がしますよね。

この2つのお米は見た目や食感だけでなくカロリーにも違いがあり、タイ米は100gあたり約193kcal、日本米は約168kcalで、やや日本米のほうが低めになっています(※)。
※食品成分データベース:文部科学省

「平成の米騒動」で、なぜタイ米は日本人に不人気だったのか
そんな「タイ米」が日本を賑わせたのは1993年。冷夏による不作が原因でお米が不足し、政府がタイやカルフォルニアからお米を輸入するという出来事がありました。これが世にいう「平成の米騒動」です。日本のお米がなくなって、私たちはタイからお米を輸入して食べることになったのですが、これが日本人の口にはなかなか合わなかったのです。パラパラで独特の風味のするタイ米は、お箸で食事をする日本人には扱いづらく、あっさりした和食味にもあわせにくい。タイ米の中でも日本米に近い小さなサイズのお米もあり、タイの人たちはそれをわざわざ日本に送ってくれたのですが、独特の風味やパサパサした食感が苦手だった日本人はそれを捨ててしまったんです。 タイの人たちの心遣いを知っていただけに、TVやラジオ等でその話を聞いた時は、同じ日本人として本当に心が痛みました。

当時は、タイ米を日本米に近づける方法を教えた
きっとそのニュースはタイの方々の耳にも入っていたでしょう。少なくとも日本にいたタイ大使館の方々は寂しい思いをしていたと思います。当時すでに私はタイ料理研究家として活動をしていましたので、彼らの善意を無駄にしないためにも「タイ米のおいしい食べ方」を教えてまわっていました。そのときにお話ししていたのは「タイ米でタイ料理を食べてください」ということ。

しかし、当時はまだタイ料理を作る材料も今のように簡単に手に入れられる時代ではありません。そこで何をしたのかというと、日本人の口にあう調理法を提案しました。日本人はもっちりした食感のお米が好きなので、お米を炊くときに一握りのもち米を入れたんですよ。そうすることでパラパラ感が解消され、日本の料理にも合うようになりました。

そのほか、お米1カップに対して小さじ1くらいのサラダオイルを入れてお米にツヤを出したり、タイ米の香りが苦手という方には、先ほどのもち米入りのタイ米でおにぎりやお寿司を作りました。のりを巻いたり、酢飯にして中に濃い味のものを入れて巻くと、においが緩和され、皆さんおいしく食べてくださいました。

今、日本にタイ米が浸透した理由は?
タイ米が今のように食べられるようになったのは、タイと日本の往来が簡単になったからではないでしょうか。現地を訪れて、タイのお米でタイのおかずを食べたときに「おいしい」と思う人が増えたのだと思います。実際に日本観光振興機構などのデータでも、2014年以降にタイを訪れる日本人観光客の数が増えているというデータが出ていますよね。

<タイ国訪問日本人数>
2014年:1,267,886
2015年:1,381,702
2016年:1,439,510
2017年:1,544,442
2018年:1,655,996
(出典:『2014年〜2018年各国・地域別日本人訪問者数』、独立行政法人日本観光振興機構、2020年)

それより前、1987年の「日タイ修好宣言調印100年記念」の時にもタイの催しが行われたり、タイ料理のお店も日本に少しずつ増えてはいましたが、全国的なブームというまでにはまだまだ。当時は日本人のコックさんでタイ料理を作っている人も少なかったですからね。

タイ料理のレシピ本もあまり販売されておらず、私が初めて「私のタイ料理」というレシピ本を出版したのも1992年でした。ようやくタイの調味料の輸入が始まり、タイの調味料を手にする人が少しずつ増えたことで、レシピのニーズも高まっていきました。

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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20201228-00010000-cookpadn-life