新型コロナウイルスの猛烈な感染第3波に見舞われている北海道。中でも日本3大歓楽街の一つと言われる、札幌のススキノが苦境に立たされている。「感染拡大の大きな増加要因」と行政に名指しされ、休業や時短営業を要請。客足が遠のき、街のネオンが消えた。

 飲食店ばかりではなく、300店あるとされる性風俗は苦しい経営を余儀なくされている。生きるのに必死――。女性たちは偏見に苦悩しながら、“濃厚接触“のリスクにさらされながら働き続ける。店も性産業を支援しないとする行政にいら立っていた。

風俗ビルの6割閉店…“客と従業員感染“公表した店

「このビルに入る他の店は、もう3分の1くらいしか残っていない」

 風俗店店長の30代男性は人気のない廊下で寂しそうに語った。ビルは9階建てで、テナントはすべて性風俗店。17店が競うように入り口の壁を埋め尽くしていた行灯(あんどん)はいまや7つだけとなった。11月20日、感染者が北海道全体で304人と過去最多を更新。札幌でも191人と猛威を振るっている最中だった。

 店は15年前から営業している人気店「バカラ」。「メンズエステ」と称し男性客に性的なマッサージを提供していて、サービスする女性は約10人が在籍している。コロナ禍でも通常営業を続けてきたが、第3波が直撃。客と従業員の2人が感染した。

 男性は11月19日、店を休業しブログに事実を公表。思いの丈をつづった。

 「当店は風俗店で何の補償も受けられないですが、命を優先し公表いたしました。ススキノでは残念なことに非公表の店が後を絶ちません。その結果『夜の街関連』とひとくくりにされ、クラスター(集団感染)も発生しやすく、ススキノで遊ぶ人が激減してしまった」

ススキノでクラスターが公表された翌日は必ず客が激減する。ススキノ全体がひとくくりで評されているが、対策で足並みがそろわない他店に、男性はいら立っていた。

客は半減し赤字経営「1年以内に潰れてしまう」

男性は札幌市保健所の対応にも怒り心頭だった。

 「『営業は自由で、店名は公開しなくて結構。消毒もお店の判断で業者の紹介はできない』と言われ、あ然とした。そんな対応だから、陽性者が出ても公表せず営業を続ける店が続出し、クラスターが広がったと思う」
 保健所の主張はこうだ。「休業を強いたり公表したりする権限はない。私たちの対応の是非はお答えできない」。男性は腑(ふ)に落ちないまま1週間休業した。

 恐れていた風評被害はなく、客から励ましの電話が寄せられ、ネットでは賛辞の声が上がった。

12/29(火) 19:05
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