休廃止の可能性がある酒田火力
 二酸化炭素(CO2)を多く排出する非効率な石炭火力発電所を休廃止する政府方針を巡り、東北電力グループの酒田共同火力発電(酒田市)が石炭火力2基を運転する酒田市で、波紋が広がっている。2基は削減対象となる可能性が高いが、石炭は酒田港で貨物量の半分を占めており地域経済への影響は甚大だ。市や労働団体は拙速な議論に危機感を強める。

 酒田火力はともに出力35万キロワットの1、2号機が稼働中。2号機は石炭と木質バイオマス燃料を混焼している。2基で山形県内の使用電力の半分ほどを発電する。発電方式はタービンを回転させる蒸気の圧力の低い「亜臨界圧」で、発電効率の劣る旧式とされる。

 政府はエネルギー基本計画で、亜臨界圧と、蒸気の圧力のより高い「超臨界圧」を非効率な石炭火力とし、2030年に向けて段階的に休廃止する方向性を示す。梶山弘志経済産業相は20年7月に具体策を検討するよう指示し、有識者による会合で議論が始まっている。

 危機感を募らせているのは酒田市や労働団体だ。地方税収や地元企業との取引、工業用水の利用など、酒田火力の存在は地域で極めて大きい。

 酒田火力の昨年度の売上高は381億円。市の19年度一般会計の予算規模の63・1%に相当する。酒田港は発電用石炭の入荷に大きく依存し、19年は港全体の取扱貨物量の54・2%を石炭が占めた。

 雇用環境も影響を免れない。酒田火力の従業員114人のうち40歳未満が半数を超え、理工系の教育を受けた地元出身者の貴重な就職先となっている。関連業務に常時従事する地元の協力会社の工事関係者らも380人に上り、定期点検時は作業員320人が追加される。

 酒田共同火力労働組合が加盟する電力総連の岡崎信勝会長代理は「石炭火力は電力の安定供給を支え、地域の雇用と強く結び付いている。政府は地域の事情に合わせ丁寧に議論を進めるべきだ」と話す。

 丸山至市長は「休廃止は酒田の雇用と経済に甚大な影響を与える。撤退が決まってからでは遅いので、地域にとっていかに重みのある事案なのかを関係者に訴えていきたい」と述べる。

 酒田火力は、酒田港再開発に伴い誘致された企業と東北電が共同出資で設立し、1977年に運転を開始した。燃料は当初重油だったが石油危機で石炭に転換。誘致企業が業績不振で解散したため87年に東北電の単独出資となった。

河北新報 2021年01月02日 10:52/ 11:01 update
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