「学校に意見を言ってしまうと『モンスターペアレンツ扱い』されるから何も言えない」という親たち。
「子どもの運動会のリレーのことまで口を出されて困る」という教員たち。
では、保護者と親とは「何も言い合わない」ほうがいいのだろうか。どうすればより子どもたちにとっても良い学校が生まれるのか。
ジャーナリストの島沢優子さんが「親と学校が意見を思う存分交し合う」学校の取材を経て感じたことをお届けする。

●保護者からの過度な要求とは

退職する先生が増えている。
うつ病などの心疾患が原因で、2019年度に休職した公立小中高・特別支援学校などの教職員が全国で5478人、18年度に退職した公立学校教員が817人と、ともに過去最多だった。12月22日に文部科学省の調査で明らかにされた。

報道によると、文科省には学校現場から「残業が多い」「保護者からの過度な要求への対応で疲弊している」などの声が寄せられているという。
思えば、私自身も一度だけ担任の先生に意見し、泣かせてしまったことがある。この連載でもすでに書いたが、娘が小学4年生のときに廊下で給食を食べさせられた話だ。

担任が男児を指さして「君がクラスにいると、みんな迷惑だと思っているよ」と言った際に、娘が、なぜみんなが迷惑だと思っているとわかるのか、自分は迷惑だとは思っていないと発言したことがもとで、下校時まで廊下に出された。

「僕が授業しづらい」と訴える担任に、「子どもは先生の授業を成立させるために教室にいるのではない。
娘は先生と異なるかもしれないが、自分の意見をぶつけているだけで聞いてあげるのが先生の役目じゃないのか」と意見した。
泣いてしまった先生にとって私の意見は「過度な要求」だろう。けれど、私からすれば「当たり前の意見」である。

●どうでもいいようなクレームもある

無論、学校にそんなこと言っても仕方ないじゃん、と言いたくなるような保護者もいる。
「隣のクラスよりも算数が4ページも遅れている」
「息子が風邪で体調が悪いときに、リレー選手を選ぶテスト走が行われた。他にもそういう子がいたみたいなのでやり直すべきだ」

授業の進み具合はクラスによって多少の違いがあって当然だろう。そんなに目くじら立てることもない。リレー選手のテスト走の件は、わが子のことで頭がいっぱいなのだろう。

●「子どもの前で担任の悪口は言わないで」

そういえば、うちの子どもたちが小学生だったころ、学年保護者会のたびに、学年主任や校長から「子どもの前で担任の悪口は言わないでください」と言われていた。
理由は「子どもがダメな先生だと思ってしまうと、言うことを聞かなくなるから」という。
先生と子どもの信頼関係ができていれば、親が何を言っても揺らがないだろうにと思ったが、親の言うことに引きずられる子どももいるんだろうしと黙っていた(珍しく)。

だからといって、学校サイドは「担任について疑問を感じたときは直接意見してください」とか「学年主任や校長の私に話してください」とも言わない。
学校や管理職が、親から逃げているなあと強く感じていた。担任が若いとかキャリア不足なら、学年主任や管理職が一緒に保護者の話を聞けばいいのではと思うのだが、そうしない。情報をどこまで共有しているのかも不透明だった。

連載には書かなかったが、実は「僕が授業しづらい」と訴えた担任に意見したあと、私は学校の廊下で会った学年主任に「〇〇先生の件ですが」と話そうとした。ところが、その学年主任は「今ちょっと取り込んでいて」と言い残し、ダッシュで消えてしまった。

当時仕事も忙しく、このことを後回しにしているうちに、学年主任も担任も異動になった。以来、ママ友たちとの飲み会でしばらくの間は「二人も追い出しちゃったモンペ(モンスターペアレンツ)」といじられ続けた。
担任と保護者の「溝問題」、いかんともしがたいなあ……。

(続きはソースにて)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78942?imp=0