新型コロナウイルスの爆発的な拡大を受け、東京都は3日、飲食店などに要請している夜10時までの「時短営業」を、夜8時に前倒しするための検討を始めた。小池知事は「時短要請しても従ってもらえない」と難色を示していたが、政府の要請に従った格好だ。しかし、これまでも散々時短を強いられてきた飲食店に余裕はない。「夜8時営業」に応じる飲食店がどれだけあるのかは見通せない状況だ。

 都は既に、昨年12月18日から今月11日まで、飲食店に夜10時までの時短営業を要請している。応じた場合、1事業者当たり100万円の協力金が支給されるが、繁華街では夜10時以降も営業する店が目立つ。東京・新宿の歌舞伎町で2店舗を営む関係者は「客がいたら夜10時で閉めるわけにはいかない」と明かし、「1事業者100万円の協力金では全然足りません」と嘆く。現状、夜10時以降も営業を続けているという。

 閉店時間が夜8時に前倒しとなれば、「仕事帰りの一杯」需要を当て込む居酒屋などは商売が成り立たなくなる。

 都内で接待を伴う飲食店を複数店営む関係者は、「うちは夜8時営業開始。急に『閉店時間の前倒し』と言われても従っていられない。看板を消してでも営業して、酒代と人件費は稼がないとやっていけません」と頭を抱える。

■1都3県に緊急事態宣言で個人消費は3.3兆円消える

 都や政府は簡単に「時短営業」「休業要請」と言うが、飲食店にとっては“死刑宣告”に等しい。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、緊急事態宣言が1都3県で1カ月間発令された場合、「個人消費が3.3兆円減り、14万7000人が失業する」と試算している。この1年間、コロナ禍に直撃され、ただでさえ経営が厳しい飲食店は、時短要請に「ハイ、そうですか」と従える状況ではないのだ。

 経済ジャーナリストの井上学氏はこう言う。

「家賃が高い都心部の店舗は、夜10時までの時短営業も守れていない状況です。理由は、100万円程度の協力金では『店が潰れてしまう』ということ。夜8時に前倒ししたら、さらに“門限破り”的に営業する店が続出するでしょう。また、店側のみならず、仕事後に食事をとりたい利用者からも不満が上がるのは必至。緊急事態宣言で、大半の企業の活動停止も求めるならまだしも、飲食店だけを“標的”にしても効果は見込めません」

 そもそも、制限をかける側の小池知事や菅首相がコロナ禍で「密」会食をやっていたのだから、「自粛しろ」と言われても、うすら寒いだけだ。

1/4(月) 14:15
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210104-00000017-nkgendai-life