総務省は今夏にも、携帯電話の乗り換え手続きを支援する「スマホ乗り換え相談所」の試験事業を始める。携帯各社が料金の値下げを進める中で、中立の立場で各社のサービスを比較して、利用者それぞれに合った会社や料金プラン、機種への変更を後押しする。政府が税金を投じ、民間サービスを比較する場を設けるのは異例だ。

 総務省は「相談所」に、複数の保険会社の商品を扱う「保険ショップ」のような役割を想定している。携帯電話業界では、販売代理店が個別に大手携帯会社と契約しており、他社のプランは紹介していない。また、携帯電話のプランは、割引を受けるのにさまざまな条件が付くなど複雑で、比較するのも簡単ではない。こうしたわかりにくさが、利用者に携帯会社の乗り換えを思いとどまらせる要因にもなっており、相談所を通じて個々に最もお得なプランを勧めるなどして携帯会社間の競争も促す。
 相談所は今夏以降、全国3カ所以上に開設する。運営は民間の中古端末取扱事業者や修理事業者、量販店などに委託する方針で、既に複数の事業者が関心を示しているという。
 総務省は、携帯各社の料金プランを比較できるシステムの構築費用や人件費など約1億4000万円を負担するほか、将来は本格的な事業化も後押しする。特定の携帯会社に偏らずに中立性を保てるビジネスモデルや運営事業者の資格制度などについても検討する。
 政府がこうした取り組みを始める背景には、利用者が自分に適した料金プランを選べていない現状がある。総務省の利用実態調査によると、大手携帯会社と契約している利用者のうち4割程度が、月20ギガバイト以上のプランだが、実際にそこまでのデータ容量を使っているのは1割程度にとどまる。多くの人が余分に料金を払っているのが実態だ。
 携帯料金を巡っては、NTTドコモ、ソフトバンクが新料金プランを発表。KDDI(au)も1月に新料金プランを発表する予定で、政府が進める乗り換え促進に向けた環境は整いつつある。ただし、新プランはウェブでの手続きが中心だ。相談所では、ウェブ手続きになじみのない人でも気軽に乗り換えができる支援も検討する。【本橋敦子】

毎日新聞

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