経済の記事でときどき「MMT」という言葉を見かけるわ。
インフレにならない限り国はいくら借金してもいいみたいな学説らしいけど、本当かしら。
疑問を持つ人も多いみたい。中身が気になるわ――。
現代貨幣理論(MMT)について、石川雅子さんと菅原直美さんに、清水功哉編集委員が解説した。

――MMTとは、いったいなんでしょうか。
簡単に言えば、国は景気回復に向けてもっと借金をして、支出をしてもよいという主張の裏付けとなる理論です。
自国通貨建てで国債を発行できる国では、返済に必要な自国通貨は自由に発行できるので破綻の心配はなく、インフレにならない限り財政赤字を増やしても問題ないと考えます。

主唱者のステファニー・ケルトン米ニューヨーク州立大教授は、著書で「財政赤字こそ、新型コロナウイルスのショックを脱する唯一の道だ」と主張しています。

米国では主に民主党左派に支持者がいます。2021年1月に発足する新政権は、大規模なインフラ投資などを進めそうです。
コロナ問題の景気への悪影響が長引きそうな中、バイデン次期政権の経済政策にMMTの考え方がどの程度反映されるかが注目されています。

――国の財政赤字が大幅に増えるのはダメ、という話をよく聞きますが。
それだけにMMTは論議を呼んでいます。ひとつの論点は「インフレにならない限り財政赤字を増やしても問題ない」という部分が、政策として現実的かでしょう。
物価上昇率がある水準を超えた場合は、財政支出削減や増税などで対処するということでしょうが、簡単ではないと不安視する声があります。

共立女子大の植田和男教授は、「財政政策は機動的に動きにくく、支出拡大の流れをすぐに止めることは政治的に難しい」と指摘します。
いったんインフレに火が付くと、外国為替市場で通貨安が進み、輸入物価の上昇で、さらにインフレが進む恐れもあります。

――日本は財政赤字が膨らんでもなかなかインフレにはならないようです。
確かに物価上昇圧力が鈍い現象は主要先進国に共通しており、当面続く可能性はあります。
ただ「インフレさえ起きなければ経済に問題が生じないというわけではない」(門間一夫・みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミスト)点にも注意が必要です。
物価安定のもとでも不動産など資産価格の高騰はあり得ます。いずれはバブルが崩壊し、経済に負の作用を及ぼしかねません。

インフレにならないからといって財政支出をどんどん拡大すると、効率性の低い投資が増え、経済の成長力を下げるという懸念もあります。

もっともMMT論者も無意味な投資を容認しているわけではなく、ケルトン氏は「国民にとって、バランスのとれた公平な経済を実現するために予算が使われているか」を重視する姿勢です。

――MMTは極論なのでしょうか。
専門家の間では「極論だが傾聴すべき要素もある」(みずほ総研の門間氏)との声もあります。
「日本で長い間財政赤字を膨らませても、インフレや金利上昇が起きなかった事実を踏まえれば、財政活用の余地は従来考えられていたよりは大きそうだ」との見方です。
日本では、金融政策が限界に直面していることも踏まえた意見です。


米国でMMTが関心を集めるようになった背景のひとつは、社会問題化している行き過ぎた格差の拡大でしょう。
日本にも言えることですが、例えば所得の低い層もカバーするような教育への投資は、格差是正に効果があるかもしれません。

また、自然災害の多い日本では、その防止に本当に有効であれば国土強靱(きょうじん)化などのインフラの強化も意味を持ちそうです。
ただ財政政策では、極論を選択する前に、分野や事業ごとに投資効率の高い「賢い支出」を選別することが極めて重要であると考えます。

(全文はソースにて)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f0a48789b2f42d75da98aaea68584b1bb74f684?page=1