連日、テレビや新聞は「医療崩壊」の危機を声高に叫んでいる。その一方で、多くの研究者がコロナをめぐる論文を発表。
最新論文の中には、驚きの研究結果も報告されている。発売中の『週刊現代』が特集する。

「茶は養生の仙薬なり」
鎌倉時代の禅僧・栄西が『喫茶養生記』に記したように、お茶は古くから万病に効く薬として重宝されてきた。

それから800年以上の時が流れたいま、お茶が新型コロナウイルスにも効果を発揮する可能性が浮上している。
衝撃的な事実を明らかにしたのは、名門・奈良県立医科大学の矢野寿一教授率いる研究チームである。

このチームは、緑茶や紅茶、大和茶など、市販のお茶10銘柄に、新型コロナウイルスを混ぜる実験を行った。
そのまま放置し、1分後、10分後、30分後に、感染力を持つウイルスがどれだけ残っているか検査するのだ。

まず実験で使われたのが「茶葉から淹れた紅茶」だ。コロナを混ぜた段階では、
1㎖あたり6×10⁶PFU(ウイルスを数える単位)の感染力があるウイルスが存在していた。
ウイルス混合からわずか1分、変化が起きた。感染力があるウイルスの量が、2・25×10⁴PFUまで、なんと99%も減少したのだ。

減少分のウイルスは存在自体はしているものの、細胞に侵入し、感染する能力はすでにない。
お茶に含まれる何らかの成分によって、感染力が失われる「不活性化」が起きたのである。

さらに紅茶にコロナを入れてから30分後には2・5×10²PFUまで減少した。
99・975%と、ほとんどすべてのウイルスが人体に感染する力を失った。

効果があったのは紅茶だけではない。緑茶でも、商品によっては30分間で99%近いウイルスが不活性化された。
種類による差は見られるものの、お茶の効果によってコロナが不活性化されることが明らかになった。この衝撃的な結果に、研究者は騒然とした。

だが、一筋縄ではいかないのが科学の世界である。
たとえば「紅茶をよく飲むイギリスで、コロナが爆発的に感染拡大しているではないか」という反論もあがっている。

奈良県立医大の最新の研究結果を私たちはどう捉え、どう活かしていけばいいのか。

そもそも、なぜお茶でウイルスが不活性化したのか。東邦大学医学部名誉教授の東丸貴信氏が答える。
「お茶に含まれるカテキンの効果です。コロナの表面には、細胞に侵入する際に使うトゲ(スパイク)が付いており、
カテキンはこのスパイクに付着して感染力を奪うのです。この事実は、インドのERA大学の実験でも明らかになっています」

カテキンは、お茶の渋みを感じさせる成分だ。実験結果では、市販の緑茶では商品ごとにウイルスを不活性化する力に差があった。この理由もカテキンで説明できる。

ペットボトルの裏面の成分表には、「カテキン量」という欄がある。『伊右衛門』(サントリー)は「約8〜29mg(100ml当たり)」、
『お〜いお茶 緑茶』(伊藤園)なら「約40mg(100ml当たり)」とある。

実験で使われたお茶の商品名は明かされていないが、カテキン量の違いが実験結果の差になったと推測できる。
では、カテキン量が多いお茶を多量に飲めば、コロナにかからないのか。残念ながら、話はそう単純ではない。

カテキンには副作用があるからだ。カナダでは、高濃度茶カテキンが原因と疑われる肝臓障害が報告されている。
また、お茶にはカフェインも含まれるため、飲みすぎれば吐き気やめまいをもよおしてしまう。

さらに、体内でカテキンが分解されず、ウイルスを不活性化できるという保証もない。
試験管の中で起きていることを人の体内で再現するのは、至難の業だ。

とはいえ、ウイルスを不活性化するカテキンの力を活かす方法が、ひとつだけある。お茶を飲むのではなく、お茶でうがいをすればいいのだ。

「ウイルスは喉や口内の粘膜や鼻腔にくっつくのですが、すぐに細胞に入らず、付着したままになっていることがあります。
この状態のコロナなら、お茶でうがいすることでカテキンの力により不活性化できるかもしれません」(前出・東丸氏)

カテキンは、熱いお湯のほうが多く浸出する。熱湯で淹れたお茶を冷ましてから、うがいするのがオススメだ。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79248