【1月20日 AFP】7月に開幕する東京五輪について、組織委員会の武藤敏郎(Toshiro Muto)事務総長が19日にAFPの取材に応じ、
開催の方針は「揺るがない」と話した。その一方で、無観客の可能性は否定しなかった。

 7月23日の開会式まで間もなく半年になる中、武藤事務総長は、開催都市の東京に緊急事態宣言が出た日本を含め、
新型コロナウイルスの感染者が各国で急増していることに国民が「不安」を感じていると認めた。
しかし、ワクチンの接種を選手や観客に義務化せずとも開催は可能だと強調し、感染状況が改善すれば世論の風向きも変わるはずだと話した。

 武藤事務総長は「開催することがわれわれの揺るがない方針。従って、その他のことの議論は現時点で全く行っていない」と、中止に関する話し合いはしていないと明言した。

 東京五輪は昨年3月、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、戦争以外の理由では初となる延期が決まったが、
そこから約10か月がたつ今、開催を危ぶむ声が再び各所から上がり始めている。

 英国では、2012年ロンドン五輪の組織委員会副会長がBBCで「開催される可能性は低い」と発言し、
ある有名な五輪出場選手は開催は「ばかげている」と話している。組織委員会は徹底した感染対策を打ち出したが、今月行われた国内の世論調査では、今夏の開催に反対する声が8割近くに上った。

 海外からの観客の受け入れや、そもそもの有観客の可能性など不透明な部分も多い。
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は昨年11月、有観客開催へ「大きな自信」を見せていたが、
政府は現在、外国人の入国をほぼ禁止しており、国内スポーツイベントの観客数についても、5000人か収容定員の半分の少ない方に制限している。

 武藤事務総長は無観客開催について、「望ましくない」と話しながらも、可能性は除外しなかった。

■「最大の課題」

「可能性という点では、もちろんどうなるか分からないが、無観客は基本的に望ましくない。
しかし、春にどのような結論になるかは、今後のことなので、予断をもって申し上げることはできない」

 仮に入場ができても、声援が禁止されれば、過去の五輪とは異なる雰囲気の大会になる。
武藤事務総長もそのことは認めつつ、「観客の方々が試合を見て受ける感動には、いささかも変更がないと思う。ドラマがある限り、人々に感動を与えることはできる」と続けた。

「最大の課題」は、選手に対する定期的な検査の実施、移動の制限、選手村の滞在期間の短縮などを定めた数多くの対策を実行する部分で、
「コロナ対策をしっかり講じなければ、安心・安全な五輪にはならない」と話している。

 世界的にみれば、日本の感染状況はひどくない方で、ここまで死者も4500人超に抑えられているが、
このところの数字の急増を受けて、五輪開催への不安も再燃している。共同通信(Kyodo News)の世論調査では、45パーセントが再延期、35パーセントが中止を望んでいるという結果が出た。

 武藤事務総長は、国内外で厳しい感染状況の中で「人々が不安を感じるのは当然だ」と述べた上で、ワクチン接種が始まって状況が改善していけば、国民の理解も進んでいくはずだと話している。

 しかし日本では、医療従事者や高齢者を対象としたワクチン接種が始まるのが2月下旬からの予定で、一般の人が接種できるようになるのは、
五輪開幕2か月前の5月からだという報道も出ている。武藤事務総長も、選手やファンに対するワクチン接種の義務化は議論していないと改めて口にしている。

 武藤事務総長は、新型ウイルスが近い将来に完全に消える可能性は低いと予測した上で、だからこそ五輪の重要性は高まると話している。

「そういう状況だからこそ、スポーツを通じて人類の平和と共存を実現するという、五輪の価値をもう一回思い出す必要があると思う」

「もしわれわれが東京大会で、大きなイベントをコロナのもとで開催できれば、東京モデルが一つのレガシーとして残っていくのではないかと思う」
https://news.yahoo.co.jp/articles/a1eb5d5205c07816fa42a02e14951e3cb12527cf