米大統領選の結果を受けて1月20日、米国の首都ワシントンでは2.5万人の州兵が不測の事態に備えるなか、就任式が行われた。今回の大統領選の混乱にしても、そして就任式の警戒にしても、未曾有の政権交代劇であった。

 トランプ政権は交代直前に、台湾との間の官僚交流規制の撤廃を決め、中国のウイグル人弾圧を「ジェノサイド」と認定するなど、対中強硬路線を進められるところまで進めた。バイデン政権がもしもこの路線を後退させることがあれば、やはりバイデンファミリーは中国に弱みを握られているのではないか、と疑われるだろう。だから、当面はやはりバイデン政権も対中強硬路線をとらざるを得ない。

 だが、当然、トランプ路線をそのまま大人しく継承するつもりはないだろう。少なくとも貿易戦争、台湾問題については中国との折り合いを見つけていくタイミングを探るとみられている。また新型コロナ対策と脱炭素政策では、新型コロナをほぼ制圧したと胸を張りカーボンニュートラルをスローガンに掲げる習近平政権と、積極的に協力していくことになろう。

 そのため多くの識者が心の中で、今回の選挙の最大の勝者は中国習近平政権ではないか、と思っている。いや、習近平自身がそう思っているはずだ。だからこそ「時と勢いは我が方にあり」という発言が飛び出したのだ。

 1月11日、習近平は高級官僚向けの年初のスピーチで「世界はまさに百年に一度の未曾有の大変局を迎え、“時と勢い”は我々側にある。我々が通常の力と底力の在り処(ありか)であり、決意と自信の在り処でもある」「中国の発展は依然として重要戦略のチャンスを迎えている」と語った。また1月16日発刊の共産党理論誌「求是」にも「時と勢い」についての見方を寄稿している。

■ バイデン政権はいつ親中路線に転じるのか

 さて、バイデン政権が当面は対中強硬路線をとると記したが、親中シフトに転じるのはいつごろになるだろう。

 習近平は、1月25日から29日にかけて開催されるダボス会議に北京からビデオで参加し、開幕式で特別演説を行うことになっている。ここで習近平の発するメッセージにどのように反応するかが、バイデン政権の対中姿勢を判断する1つの指標になると、中国側はみている。

 香港の英字紙「サウス・チャイナ・モーニングポスト」が1月19日に中原銀行主席エコノミストの王軍のコメントを引用して、習近平は1月25日のスピーチで新型コロナとの戦いにおける中国の成功を回顧し、同時に新型コロナパンデミックと気候変動問題において広汎な政策協力を呼びかけるであろう、との予測を示している。おそらく今年(2021年)の習近平の対グローバル政策の骨子は、コロナと脱炭素だ。コロナワクチン外交で途上国を取り込み、カーボンニュートラル経済で先進国を取り込む、というわけである。

 ダボスでは、おそらくコロナ対策と、コロナ下の経済危機状況を脱するための国際的な経済金融政策協調がホットなテーマとなろう。そういう場で、習近平のメッセージに世界がどうリアクションするかが、ポストコロナの国際秩序の枠組みにおける中国の存在感を占う大きな材料となる。トランプはコロナの責任を中国に求める姿勢を崩していなかったが、バイデン政権がそこにこだわらなければ、中国にとってこれほど助かることはない。

 バイデン政権から誰がダボス会議に派遣されるかは今のところはっきりしていないが、アンソニー・ファウチ米国立アレルギー・感染症研究所所長が出席することは明らかになっている。ダボス会議では、習近平のほかインドのモディ首相、日本の菅義偉首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相らがビデオ参加する予定なので、それぞれの反応に注目したい。

 ちなみに、習近平が初めてダボス会議でスピーチを行ったのは2017年1月、トランプ政権発足の数日前のことだった。このとき習近平は「保護主義にはノーと断言すべきだ」とトランプ次期政権を牽制する内容のスピーチを行っている。

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