ULM2021年1月22日中山まち子(教育ジャーナリスト)
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 都内に若者が集中することを避けるため、近年は私立大学の入学定員管理が厳格化され、一般入試突破が難化。これを避けるために安全志向が加速してきました。

 結果、有名大学群であるMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)は軒並み志願者数を減らし、2021年は安全志向だけでなく、コロナ禍による東京回避の動きも加わっています。

 今回は大学入学共通テスト利用入試の志願者動向から、都内の私立大学について見ていきます。

◆不況時の「文低理高」とはいかない私立大

 共通テスト利用試験の出願締め切り日(消印有効)は、明治大学(千代田区神田駿河台)の大学入学共通テスト利用入試の後期日程や中央大学(八王子東中野)法学部の前期選考5教科型の1月25日締め切り、青山学院大学(渋谷区渋谷)の1月16日締め切り(消印有効)を除くと1月15日となっています。

 志願者数が確定した青山学院大学では大学入学共通テスト利用する志願者が2020年よりも4648人減少しました。内訳は国際政治経済学部が864人減、理工学部が492人減、文学部が71人減。しかし全学部が一律減少しているわけではなく、教育人間科学部や経営学部、そして地球社会共生学部は2020年より志願者が増加しています。

 大学全体では志願者が伸び悩んでいるものの、学部によって増減が見られるのは中央大学や明治大学も同じです。両大学とも1月21日の段階で志願者数は確定していませんが、2020年よりも志願者数を増やしている学部があります。

 明治大学の大学入学共通テスト利用入試は、1月21日までの集計時点で法学部の志願者数が2020年より735人増、経営学部が460人増、情報コミュニケーション学部が329人増となっています。しかし理工学部は1548人減、商学部は1311人減、文学部は661人減と、まだ確定はしていないものの、学部によって明暗が分かれました。

 一方、中央大学の看板学部である法学部は1月20日までの集計を見ると、2020年より163人減少しています。志願者が伸び悩んでいるのは、文学部や総合政策学部と理工学部。しかし商学部や国際情報学部では、それぞれ2020年よりも約180人増えています。

 不況になると、一般的に就職に有利な理系学部が人気になります。この「文低理高」はMARCHの大学入学共通テスト利用入試では見られません。いくら人気の高い大学でも、私立の理系学部の学費は文系学部より高くなっています。そういったことからも、コロナ禍で学費を滞りなく納められるかどうかも志願者動向につながっていると考えられます。

◆他大学より減少幅が少ない立教大学

 1月21日の段階で、MARCHの各大学において大学入学共通テスト利用入試の志願者数が伸びていないなか、前年比211人の減にとどまっているのが立教大学(豊島区西池袋)です。

 もちろん、他の大学と同様に文学部や理学部などでの減少が目立っているものの、経済学部、社会学部、法学部で志願者が増加しています。そして池袋キャンパス全体の減少の穴埋め役となっているのが、新座キャンパス(埼玉県新座市)のコミュニティ福祉学部と現代心理学部です。

 新座キャンパスの学部は先述の2学部と観光学部です。観光業がコロナ禍で大打撃を受けていることもあり、現時点では2020年より139人減となっています。しかし、コミュニティ福祉学部は739人増、現代心理学部は26人増。都心から離れている新座キャンパスの存在が功を奏した形となっています。

 その一方、都市型キャンパスとして有名な法政大学(千代田区富士見)は苦戦を強いられています。ふたつある大学入学共通テスト利用入試のなかで、キャリアデザイン学部の「共通テスト利用B方式」が唯一2020年よりも志願者数増という状況です(1月21日時点)。

 数日後には、すでに確定している青山学院大学以外の大学も大学入学共通テスト利用入試の志願者数が決まります。

 MARCHの動向を見ても、東京の私立大学を受験する学生が飛躍的に増える要素は残念ながら今のところほとんどありません。

 私立大学にとっても、東京都心で学びたい受験生にとってもまだまだ試練が続きますが、少しでも事態が好転し、余計な不安を抱えず受験に臨める日が戻ってくることを願ってやみません。
(長文の為一部抜粋)