トヨタ自動車労働組合(組合員約7万人)は25日、2021年春闘の要求の執行部案を固めた。要求総額は「1人平均月9200円」だが、今回から基本給を底上げするベースアップ(ベア)を含むかどうかは公表しない。ベアを重視してきた春闘からの脱却を徹底する。

 トヨタ労組は昨年の春闘でベアを要求したが、経営側は自動車業界の競争激化や「賃金はすでに高い水準」として「ベアゼロ」で妥結。トヨタは全正社員の賃金を一律的に上げるベアより、働き方の違いなどに対応した課題解決型の賃上げに重点を移しつつある。新型コロナウイルス禍の今春闘は賃上げ交渉が厳しく、他企業にも「脱ベア」が広がる可能性がある。

 トヨタ労組は昨年まで、要求総額にベアや定期昇給、手当などを含むかどうかを公表してきたが、今年から内訳を非公表。要求総額9200円は昨年の1万100円より900円少なく、妥結額8600円より600円高い。単純比較できないが、ベアを含み1万円を超えていたここ数年の要求額よりやや少ない。

 年間一時金(ボーナス)は20年実績より0・5カ月低い基準内賃金の6・0カ月分を求める。要求案は26日に組合員に示し、2月10日に正式決定する予定。

 トヨタ労組執行部は組合員に対しても、ベア要求の有無は提示しない方針。正社員に加え期間従業員やパート社員など含めて賃上げを要求しているが、ベアは正社員にだけ配分される。このため「ベアをあえて切り出す必要はない」(労組幹部)と判断した。
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