JAXA、レノボも渋渋、渋幕の生徒に国際的な評価


新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、渋渋や渋幕からビックリするような生徒が次々誕生しています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)がアメリカ航空宇宙局(NASA)の協力を得て開催する国際的なロボットプログラミング競技会で、
渋渋の中学3年生、佐藤裕成アレックスくんが率いるチームが優勝しました。

国際宇宙ステーション「きぼう」で、ドローンを使って、ステーションの不具合を解消するためのプログラミングを競うという大会。
2020年6月に日本代表に選ばれ、同年秋の国際大会で勝利しました。

もう一人は渋幕の高校1年生の立崎乃衣さん。同年10月にパソコン世界大手のレノボ・グループから世界を変える若手女性10人のうちの1人に選出されました。
世界の主要10カ国で1万5千人以上を対象に国際調査を実施、女子高生は立崎さんだけだそうです。

コロナ禍の医療機関を支援するため、3Dプリンターを使って800人分のフェイスシールドを設計、製作して医療機関に提供した活動が評価されました。

もちろん両校でプログラミングなどを教えているわけではありません。自主的に学び、身につけた知識を生かし、成果を上げたのです。
これは学業で優秀な成績をとるのとは根本的に違います。個人として自己成長を遂げ、実際に社会課題の解決につながる成果を上げたのです。


明らかに今、日本の教育界は変革期にあると思います。グローバル化やデジタル化が加速度的に進む中、従来の詰め込み教育は限界に来ています。
渋幕や渋渋は、東大合格者を飛躍的に伸ばした学校としてメディアに取り上げられますが、単純に受験校をつくりたかったのではありません。

グローバルな舞台で活躍できる人材を育てたかったのです。そのために教育理念として、自分で調べ、考える「自調自考」を掲げました。
学校側が一方的に知識を教えるのではなく、自立的に学ぶ姿勢を身につけて欲しいと考えたのです。

同様の理念の学校は他にもありますが、私は創立以来、全生徒に対する「校長講話」を続けています。
中1から高3までの成長過程に応じたシラバス(授業計画)を綿密に設計した教養講座的な授業で、いわゆる欧米の学校で重視しているリベラル・アーツ教育です。
古今東西の哲学や思想、文学などを題材にし、生徒たちに語っています。人生や自由などついて生徒側は考え、論文も真剣に書いています。

「自調自考」を身につけた生徒は、将来のキャリアを考え、様々な進学の選択肢を求めます。
東大もいい大学ですが、米欧やアジアの有力大も選択肢の一つになります。その入試対策や準備のため渋幕、渋渋には外国人スタッフも常勤しています。

米欧に生徒を送るには国内進学と異なる負担が学校にも生徒・保護者にもかかりますが、両校では毎年それぞれ10〜20人が海外の有力大学に進んでいます。
半分の生徒は帰国子女ではなく、普通の一般生です。

好循環が生まれたのは、ロールモデルになる人材が出てきたからです。渋幕は4期生に日本マイクロソフト社長を務めた平野拓也くんがいます。
渋幕で初めてダンスパーティを開催した積極的な生徒でしたが、米国の大学に進みました。

渋渋では6期生にハーバード大学に進み、フェイスブックの米本社に入社した内山慧人くんがいます。
東日本大震災などの災害対策に対応した画期的なソフトを開発、それが創業者のザッカーバーグ氏の目に留まったそうです。

コロナ禍の中、20年は説明会がすべてオンラインになりました。米国の大学でも入試対応の事務処理が大変になっているようで、
「成績書を再発行して欲しい」など異例の要請をしてくる大学もあります。しかし、生徒たちはめげません。

コロナ禍を理由に海外大の志望を変えた生徒はいません。彼らは明確なキャリアを考え、志望先を決めているからです。
キャリアを意識して自己成長を目指す生徒は強い。今年もアッと驚くような生徒が飛び出すでしょう。


田村哲夫・渋谷教育学園幕張中高兼同渋谷中高校長
麻布高校を経て東京大学法学部卒、1958年に住友銀行(現三井住友銀行)に入行。62年に退職し、
父親が運営していた渋谷女子高校を引き継ぐ。70年から渋谷教育学園理事長。校長兼理事長として83年に同幕張高校、86年に同幕張中学をそれぞれ新設。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO6777758028122020000000