そのセックスの習慣が、あなたの「癌リスク」を上げている? ニューヨーク・タイムズ(米国)


性行為で感染するヒト乳頭腫ウイルス(HPV)と癌のリスクとの関連性を解明すべく、研究が進められている。
ある性習慣によって、癌にかかる可能性が高まるかもしれないことが、明らかになりつつある。

ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス・HPV)は喉の癌の主な原因で、性感染するものである。
しかし、性行為のタイミングや回数、種類がこのリスクにどう影響するのか、なぜある人は癌になり、
ほかの人はならないのか、ということはまだ完全には解明されていない。

研究者たちが蓋然性(がいぜんせい)の高い答えを指摘しはじめているところだ。
中咽頭癌(喉の奥、舌の付け根と扁桃腺の悪性腫瘍)の約7割はHPVが原因だ。

アメリカ疾病予防管理センターによれば、HPVが原因の中咽頭癌と診断されたアメリカの新規患者は、毎年女性が3500人、男性は1万6200人にのぼるという。
アフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人、ヒスパニック、アメリカン・インディアン、アラスカ先住民よりも白人に多い癌だ。

HPVにはたくさんの種類があるが、癌の原因になるものは限られている。HPVは喉の癌だけでなく、子宮頸部、膣、外陰部、陰茎、肛門の癌も引き起こす。
このウイルスに感染してから癌ができるまでには何年もかかり、数十年にわたる場合もある。

研究者たちはHPV由来の中咽頭癌の危険因子を特定するため、患者163人と対照の非患者345人とを比較した。
どちらのグループとも年齢幅は18〜89歳までだったが、40歳以上が95%以上を占めていた。

まず最初に、対象者全員の血液サンプルを提供してもらい、患者の腫瘍のサンプルも入手しておいた。
患者は全員、HPVのワクチン接種を受けたことがなかった。アメリカでは2006年に導入されたこのワクチン接種は、主に10〜20代の青少年が推奨対象だった。

コンピュータで一問一答形式のアンケートに答えてもらい、研究対象者たちの過去および最近の性行為についても調べた。
性的関係にあった人数、初めて性的関係を持った年齢、どんな性行為をしたか、婚外交渉の有無、性行為の際にアルコールや快楽目的のドラッグを用いるか等々。
さらには収入、学歴、性的指向、性感染症やそのほかの病歴のデータも収集した。そしてこの研究論文は、学術誌「Cancer」で発表された。

全体で見れば、HPV由来のさまざまな癌は女性のほうがやや多い。だが、HPVが原因の中咽頭癌は、男性が女性のほぼ5倍だ。
その理由は明らかになっていない。ジョンズ・ホプキンズ大学の疫学教授ジプシーアンバー・ディソーザは、こう説明する。

「いくつかのエビデンスでは、フェラチオよりもクンニリングスのほうが感染しやすいとされています。
とはいえ、それはもっと微妙な行為の代用です。多くの患者は、ハイリスクとされる性行為の経験がないのに、不幸にも感染しています。

性行為の相手の問題だけでなく、タイミング、営みの種類、相手の性癖やそのほかの要因、
さらに私たち人間の免疫学的反応といったすべてが、これに関係しているのです」

この研究では、セックスの際に相手にオーラル行為をしたことがあると答えた人は、8割以上の確率で癌患者だった。
オーラル行為を初めてした年齢も患者のほうが早く、37%が18歳以下で経験済みと答えた。

これに対し、非患者の方は23%。患者は、初めての性体験でオーラルセックスをしたと答えた人も多かった。

初体験でオーラルセックスをするとリスクが上がる理由は、まだ判明していない。
オーラルセックス以前に別の形の性行為をすれば、違う免疫反応が起きるのか。ウイルスに最初に曝露した部位が、リスクに影響するのか。

「まだ適切な答えは出ていないのです」と、ディソーザ博士は話す。

今までに性行為をした相手は10人以上と答えたのは、癌患者の約45%だったのに対し、非患者では19%だった。
23歳以下でみると、少なくとも10歳以上年上の相手と性交渉をしたことがあると答えたのは、患者のほうが割合が高い。
おそらくこれは、年齢の高い人のほうがこのウイルスのばく露(問題の因子に特定の集団・個人が晒されること)期間が長いからだろう。

ディープキスも、リスクを上げるとみなされた。ディープキスをした相手は10人以上と答えた人は、
1人もしくはゼロと答えた人よりもHPV由来の癌にかかっている割合が2倍以上多かった。
https://courrier.jp/news/archives/230063/