白金でも…都心でタヌキの目撃相次ぐ 記者バッタリ遭遇、緑多い公園などねぐら

 東京23区内で昨年以降、タヌキの目撃報告が相次いでいる。記者も先月中旬、都心の港区白金で目撃した。23区内には緑が多い公園などをねぐらにするタヌキが約1000匹生息するとみられ、遭遇の可能性は常にある。専門家は「都会でたくましく生きるタヌキを温かく見守ってほしい」と話す。(池井戸聡)
◆動物がスルスル寄ってきた…「タヌキだ!」
 1月14日夜。地下鉄白金高輪駅近くの港区白金1丁目を歩いていた記者に向かい、何やら動物がスルスルと駆け寄ってきた。「犬か?」。いや、首輪はつけていない。街灯に照らされた顔を見て正体がつかめた。「タヌキだ!」。思わず叫んだ。
 タヌキは港区立公園「白金一丁目児童遊園」に入り、落ちていたペットボトルを口先で転がしていたが、近づいてスマートフォンで写真を撮っても逃げない。数分後に再び路上へ。さらに近寄ってスマホを向けると、西へ走り去った。

 約20年前から東京のタヌキの生態を調べ、「東京タヌキ探検隊!」のホームページで公表している宮本拓海さんによると、タヌキが出たこの公園から半径500メートル圏内では2007年以降、4件の目撃報告がある。

◆「国立科学博物館付属自然教育園」など自然残る場所に
 ではどこに住むのか。宮本さんによると、約1.5キロ南西には20万平方メートル(東京ドーム約4個分)の敷地に豊かな自然が残る「国立科学博物館付属自然教育園」があり、当初はここにいた可能性が高いという。
 その後、タヌキは記者の目撃地点にほど近い白金2丁目付近に家族で「転居」。一帯には敷地内に木々が茂る服部時計店(現セイコーホールディングス)創始者、服部金太郎氏の旧邸宅(現在は空き家、敷地面積約1万6000平方メートル)や寺社が点在しており、現在は周辺をねぐらにしているようだ。

 本紙が昨年12月に目撃例を報じた豊島区、さらに江東区など、最近は東京都心でタヌキの目撃報告が相次ぐ。19年度に江東区内の関係機関に寄せられた目撃報告は5件だったが、20年度は既に14件に上る。

◆夜行性「触らずに優しい目で見てあげて」
 個体差はあるがタヌキは夜行性で人目を嫌う。目撃の増加は新型コロナウイルスの感染拡大で夜に出歩く人が減り、タヌキが活動しやすくなった影響もあるように思えるが、麻布大いのちの博物館(相模原市)の高槻成紀名誉学芸員は「それは状況によって変わる。東京全体で人の動きとタヌキの関係が変化したとまでは言えない」と語る。ギンナンや柿などの木の実や昆虫を好み、都心でも緑が多い場所には生息。かつて上皇さまは皇居のタヌキの生態を研究されていた。

 尾が長いハクビシン、尾にしま模様があるアライグマと違い、タヌキは木登りは苦手で、木に実る農作物を食べることは少ない。「狸」の文字通り古くから人里近い場所に生息し、東京でも生き延びてきた。高槻さんは「病気や寄生虫を持つこともあり触らないようにしてほしいが、優しい目で見てあげて」と話す。

東京新聞 2021年02月03日 17時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/83773