【ロンドン=佐竹実】新型コロナウイルスの感染拡大が続く欧州で、外出規制を破る若者が後を絶たない。大勢が集まれば感染リスクは増すため、ロックダウン(都市封鎖)でも感染が減らない一因になっている可能性がある。各国は罰則を強化するなどして対応するが、都市封鎖が続けば続くほど若者の不満もたまりやすく、感染症対策がいかに難しいかを表している。

累計10万人と欧州最多の死者を出した英国は1月29日、新たな新型コロナ規制を敷いた。屋内で15人以上のパーティーを違法に開いた場合、800ポンド(約11万円)の罰金を科す。これまでは200ポンドだったが4倍に増やした。再犯の場合は最高で6400ポンドと高額だ。罰則強化の背景には、規制を破る若者が減らないことがある。

英国で珍しく雪が積もった14日、英中部リーズの公園に数百人が集まり雪合戦大会が開かれた。歓声を上げて雪を投げ合ったのは大学生らで、そのうちの1人は地元紙に「(都市封鎖で)精神的に参っており、楽しみが必要。肉体だけでなく精神の健康も重要だ」と話した。地元警察は、多くの参加者を危険にさらしたとして、雪合戦を企画した20代の男性2人にそれぞれ1万ポンドの罰金を科した。

英BBCによると、イングランドとウェールズでは2020年3月末から1月17日までに、新型コロナの規制を破ったとして4万2千件以上に罰則が適用された。そのうちの8割は、18〜39歳だった。

チェコでは21年1月、感染対策で閉鎖されているにも関わらずスキー場に人が殺到し、警察が付近の道路を封鎖する騒ぎがあった。イタリアの地元紙は28日、プロサッカーのユベントスに所属するロナウド選手が恋人とスキー旅行に出かけたとして捜査の対象になっていると報じた。同国では新型コロナ対策で州をまたぐ移動が禁じられている。

厳しい規制に反対する人々がデモを行って密集する光景は、20年春の流行初期から各地で見られた。オランダでは、政府が23日に夜間の外出禁止を発令したことを受けて一部市民が暴徒化。数日にわたって警察と衝突し、BBCによると250人近くが逮捕される「過去40年で最悪の政情不安」となった。

感染力の高い変異ウイルスも広がり、欧州では都市封鎖をしてもなお収束が見えない。規制を破る人々が接触すれば、それだけ感染する機会も増える。政府は違反者をどう減らすかと同時に、長引く都市封鎖でたまる不満にも目配りしなくてはならないという難しい対応を迫られている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR304GW0Q1A130C2000000/