千葉工業大学

 -新しい育毛剤の成分として期待-

 千葉工業大学(学長 松井孝典)(以下「千葉工大」という)先進工学部 生命科学科 坂本泰一 教授は、株式会社 アドバンジェン(代表取締役社長 小池浩一郎)(以下「アドバンジェン」という)山本昌邦 博士、北海道医療大学の堀内正隆 准教授、横浜国立大学の田中陽一郎 博士らとの共同研究で線維芽細胞増殖因子FGF5注1)のはたらきを阻害する人工RNA(RNAアプタマー注2))を開発しました。

 ■ 概 要 ■

 FGF5は、毛周期において脱毛を誘導するタンパク質であり、がん細胞においてはがん化を促進することも報告されています。 私たちは、ヒトFGF5の阻害剤を開発するために、試験管内分子進化法(SELEX法注3))とよばれる手法を用いて、FGF5に高い親和性と特異性を持つ新規RNAアプタマーを 取得することに成功しました。さらに、このアプタマーが、FGF5により誘導される細胞増殖を阻害することを明らかにしました。従って、このRNAアプタマーは、 育毛剤およびFGF5に関連する疾患の治療薬となることが期待されます。なお、この研究の詳細は、Springer Natureが発行する学術雑誌Scientific Reportsに2月3日付けで掲載されました。

 本成果は、国立研究開発法人 科学技術振興機構JSTの研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の研究課題名:「人工核酸の応用による科学的に裏付けされた革新的育毛剤の開発」と、 部分的に研究課題名:「機能性核酸のデリバリー技術の確立による効果的な育毛剤の開発」の支援を受けて得られました。

 ■ 研究の内容 ■

 毛は生えて抜け落ちることを繰り返していて、この周期を毛周期と呼んでいます。この毛周期において、FGF5が成長期から退行期へのスイッチとなっていることが明らかになっています。 毛周期の成長期の終わりに、外毛根鞘とよばれる部位でFGF5が生産され、これが毛乳頭のFGF受容体に結合することで脱毛が起こると言われています。つまり、FGF5が毛乳頭へ働きかけ、脱毛シグナルを出させているのです。本研究では、このFGF5のはたらきを抑えることによって、脱毛シグナルを抑え抜け毛を抑制し、毛髪がより長期間頭皮に留まることによって、より長く成長し続けることを目指しています。今回、SELEX法によって7種類のRNAアプタマーが得られましたが、それらはFGF5によって誘導される細胞増殖を効果的に抑制することが明らかとなりました。 RNAアプタマーとFGF5の結合は非常に強く、RNAアプタマーが結合することにより、FGF5はFGF受容体に結合できなくなることがわかりました。また、RNAアプタマーと他のFGFタンパク質との相互作用を調べたところ、FGF5以外のFGFには結合しませんでした。これは、このRNAアプタマーがFGF5に対して特異的に結合することを示しており、人体に投与した場合に、他のタンパク質に作用しない、つまり副作用が少なくなることを示しています。このアプタマーは、育毛剤として非常に高いポテンシャルを持っていることが明らかとなりました。

 ■ 今後の展開 ■

 本研究では、ヒトFGF5に特異的に結合するRNAアプタマーを開発しました。 FGF5は、一部のがん細胞においてがん化を促進することが報告されていることから、FGF5によって起こる疾患の治療薬としての可能性も持っています。実際に、FGF5と同様なはたらきを持つFGF2を標的としたRNAアプタマーは加齢黄斑変性症などの治療薬として臨床試験が行われています。生体内でのRNAアプタマーの効果を確認できれば、新たな育毛剤や治療薬となることが期待されます。

https://www.sankei.com/economy/news/210205/prl2102050322-n1.html

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