進行した大腸がんで、ほかの臓器に転移したがんを手術で取り除けないときには、多くの場合、大腸にある元のがんを取り除く手術が行われてきました。国立がん研究センターなどの臨床試験の結果、この手術を行っても行わなくても生存期間が変わらなかったことが分かり、今後は手術せずに抗がん剤のみを使う治療が標準になるとしています。

国立がん研究センター中央病院の金光幸秀科長らのグループは、大腸がんが進行し、ほかの臓器に転移した「ステージ4」の患者を対象に臨床試験を行い、結果を発表しました。

大腸がんは、国内ではがんの中で最も多い年間15万人以上が診断され、このうちの2割近くを占めるステージ4の患者の治療は、転移したがんを手術で取り除くことができないときには多くの場合、元の大腸がんを取り除く手術をしたあとで抗がん剤の治療が行われています。

グループでおととしまでの7年間に治療を受けたステージ4の大腸がんの患者160人について、大腸にあるがんを切除した人と切除しなかった人で半数が生存していた期間を比べたところ、どちらも2年2か月ほどで差がなかったほか、切除した人の方が抗がん剤を受けたときに重い副作用が出る頻度が高かったことが分かりました。

グループは今後、腸からの出血などがない場合には手術せずに抗がん剤のみを使う治療が標準になるとしています。

金光科長は「がんがあると手術で取り除きたいと患者も医師も思うが、必ずしも手術が良いわけではないと分かったのは、患者の治療にとって意味のある結果だ」と話しています。

NHK 2021年2月15日 18時48分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210215/k10012868641000.html