私立中高といっても、その形態や教育内容はさまざま。保護者はどのような観点で、わが子の学校選びをすべきなのか。
計27年間中学受験の世界に身を置く作者、矢野耕平が受験で後悔しない方法を伝授。塾の新学期は2月から…『令和の受験 保護者のための参考書』で保護者も中学受験を“正しく”理解しよう。毎日連載>これまでの連載はこちら!

男女別学の「長所」と「短所」
ここ10年くらいでしょうか。保護者の方々と進路面の相談をしていると、共学校に人気が集まっていることを感じさせられます。近年、男女別学だった私立中高一貫校が「共学化」したことで受験生が爆発的に増加する事例も枚挙に暇がありません。

実際、受験生の保護者と進路についての面談をすると、こういうことをよく言われます。

「世の中って男と女で成り立っているじゃないですか。そう考えると、中高生という多感な時期は、やはり男女が同じ学び舎にいることが健全だと思うのです」

また男女別学に進学されることに対して、次のような懸念を表明される保護者もいます。

「男だけ、女だけ……そんな中高生活を過ごしてしまうと、異性への距離感がつかめなくなってしまうだけではなく、異性に対する差別意識が醸成されてしまうのではないか」

地方国立大学の医学部に在学している共学育ちの女の子から、こんな話を聞かされたことがあります。

「大学で出会う男子を観察していると、男子校出身者ってすぐに分かりますよ。こちらへ近づけず、遠い距離から何かブツブツ呟いている人は間違いなく男子校出身。逆に、キスするんじゃないかというくらいの近距離で、声のボリュームを全く調節せずに話しかけてくるのも、これまた男子校出身(笑)」

これは女子校でも同じようなことが言えそうですね。

そして、男子校と女子校は、異性の目を気にする必要がないからか、互いの本音をぶつけやすい環境であると言われます。一見、男女別学のメリットのように感じられますが、裏返せば、人間関係のトラブルが勃発しやすい環境であるとも言えるでしょう。

一方で、男女別学だからこそ異性に対して気を配れるようになるケースも耳にします。

以前、麻布中学校・高等学校校長の平秀明先生に取材をした折に、こんなエピソードを披露してくれました。

「妊娠中の女性教員がいたときは、生徒たちが教室まで荷物を持っていってあげていましたね……へえ、こいつら優しいところがあるんだなあと感心しましたよ」

同校の卒業生たちに話を聞いたところ、異口同音に言うのは、麻布生は女性教員や事務の女性職員にはとても丁寧に優しく接するようなのです。男ばかりの中高生活を送っていると、女性を「特別視」するようになる。そのプラス面が現れた一例といえるでしょう。

そういえば、男子校の桐朋で中学部長を務める村野英治先生は、生徒たちが自主的に企画したこんなイベントの話を教えてくれました。

「生徒たちの発案で、妊婦さんや乳幼児を持つお母さんたちとの交流会をおこないました。子育ての苦労など、彼女たちの本音を知ることができて、生徒たちはたいへん刺激を受けたようですね」

生身の「人間」同士の付き合い
また、わたしの観察した限りですが、男女別学出身者のほうが中高時代の付き合いが大人になってからも続く傾向にあるようです。男だけ、女だけの環境は「性別を消滅」させ、生身の「人間」同士としての付き合いになるからではないでしょうか

https://news.livedoor.com/article/detail/19703003/
2021年2月16日 6時0分
現代ビジネス