新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まってから約1年が経過した。

世界の死亡者が240万人超、米国内だけで50万人弱という驚異的な数に達する中、希望をもたらしてくれるのは、
記録的な速さで開発された複数のワクチンだ。

ワクチン接種を受けた人の数が日に日に増え続ける中、
ワクチンを打つと日々の暮らしぶりがどう変わるのかについて疑問を持っている人も少なくないだろう。

屋内で友人たちと会ったり、マスクをせずに買い物をしたりといった、
これまで危険とされてきた行動は、ワクチン接種を受ければ安全になるのだろうか。

ここでは、ワクチン接種後の一般的な行動におけるリスクについて、専門家の意見をいくつか紹介していこう。


ワクチン接種後、どのくらいたてば「完全な」免疫が発揮される?

現在、米国で承認されている米モデルナ製および米ファイザー・独ビオンテック製のmRNAワクチンは、
3〜4週間の間隔を空けて2回の接種を行う。COVID-19に対する最大レベルの防御力が達成されるまでには、2度目の接種から1〜2週間かかる。
これらのワクチンの臨床試験では、それぞれ約95%の発症予防効果が確認されている。

「これまでのところ、どのワクチンも重症化、入院、死亡に対して非常に高い防御力を発揮しています」。
米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院国際ワクチンアクセスセンター所長のウィリアム・モス氏はそう語る。

ただし現時点では、ワクチンを完全に接種した後で、免疫力がどのくらいの期間持続するかは不明であり、その答えを明らかにするには時を待つしかない。
COVID-19のワクチンは今後、インフルエンザと同じように、年に1度の予防接種として受けることになる可能性もある。

その効果の持続期間は、1年より短いかもしれないし、それより長いかもしれない。


ワクチン接種後は、感染しても無症状となって、ワクチンを受けていない人にウイルスを広げることがある?

この質問は非常に重要だが、まだ厳密な研究は行われていない。
これまでに得られたデータが示唆しているのは、ワクチン接種は、無症状の感染者数を有意に抑えたということだ。

モデルナの第3相臨床試験では、2回目接種前の診断検査の時点で、有症状および無症状の感染例が1回目の接種によって89.6%予防されたことが示されている。

英オックスフォード・アストラゼネカ製ワクチンの第3相試験の予備的な結果からは、
ワクチン接種後のスワブ検査の陽性率が67%減少したことがわかる。

この結果は「非常に有望」だと、米カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生学部の臨床名誉教授ジョン・スワルツバーグ氏は言う。
「これを踏まえれば、わたしは責任をわきまえた一人の人間として、より安全にほかの人たちの近くにいられるでしょう」


ワクチン接種後もまだ公共の場でマスクを着用すべき?

少なくとも当分の間は、だれもがマスクを着用する必要があるという点において、専門家の意見は一致している。
ワクチンを接種した人かどうかはほかの人からはわからず、そのせいで混乱した状況を招くかもしれない。また、ワクチンに対する免疫反応は人によって異なる可能性がある。

「つまり、100人にワクチンを接種したとしても、ワクチンに対する反応のレベルは人によってさまざまです。
自分の体を守れるだけの反応が起こらない人もいるかもしれません」と、リーファー氏は言う。

自分の体がワクチンに対してどのように反応したかを知るすべはなく、マスクは依然として体を守る手段の一つになる。
さらには、ワクチン接種を受けた人はウイルスをどの程度他人に感染させうるのかという、まだ答えのわからない課題も残っている。

「わたしは、ワクチンは大きなばんそうこうのようなものだと考えています。しかし、自分たちの身を守るためのばんそうこうはほかにもあります」と、スワルツバーグ氏は言う。
そうしたばんそうこうの一つがマスクであり、だれしもマスクの使用をやめるべきではないと、氏は考えている。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/021600077/?P=1