コロナワクチン接種回数で混乱 供給確保を優先、注射器の見通し甘く


新型コロナウイルスワクチンの医療従事者4万人への先行接種が17日、始まり、感染収束に向け期待が高まる。
ただ、予定していたワクチン1瓶当たり6回分の接種には特殊な注射器が必要で、今後の接種では回数が5回に変更されるなど混乱を見せている。

特殊な注射器の十分な確保は見通せず、接種が円滑に進むかには不安が残る。
「6回取ることができる特殊な針、シリンジ(注射筒)の確保に向け鋭意、努力している」。河野太郎ワクチン担当相は16日の記者会見で、こう強調した。

接種が始まった米製薬大手ファイザー製のワクチンは1回当たり0・3ミリリットルの薬液を筋肉に注射する。
昨年7月の同社と厚生労働省の基本合意では今年6月末までに6000万人分(1億2000万回分)を供給するとした。

1瓶当たりの接種回数は5回を想定。厚労省は、接種で実施主体となる自治体を対象に昨年12月18日に行った説明会でも「5回接種」と説明していた。

ところが、先行して接種を始めた欧米で特殊な注射器を使えば1瓶当たり6回接種できることが判明。
ファイザーは昨年末になって日本側に「6回接種」での調整を伝えてきたという。

世界でワクチン争奪戦が激しさを増す中、首相官邸は厚労省にファイザーとの正式契約を急ぐよう指示。
今年1月20日に7200万人分(1億4400万回分)の供給を受けることで契約した。1瓶は6回と想定した。

厚労省が用意していた注射器の大半は1瓶から5回分しか取れないことは認識しつつも、政府高官は「供給量の確保が最優先だった」と振り返る。

特殊な注射器の確保は難しく、厚労省は1月25日の2度目の自治体への説明会で1瓶6回に変更した接種回数を2月9日に再び5回に戻した。
この場合、ワクチンの接種人数は2割近く減る可能性がある。

厚労省は昨年末の段階で特殊な注射器の必要性に気付きながら対策を講じるのが遅れたことになる。

厚労省幹部は遅れの理由について「企業との交渉にかかわることなので詳しいことは話せない」と口を閉ざす。
ある厚労省関係者は「注射器に関する詰めが甘かったのでは」と指摘する。

厚労省は先行接種の医療従事者4万人分については特殊な注射器を確保し、対応する方針だ。
4月中の開始を見込む65歳以上の接種に合わせて特殊な注射器の輸入や国内生産を急ぐが、間に合わない恐れもある。
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