「国内産、国外産の別を問わず、全体として必要な数量について、供給契約の締結を順次進める」

2月5日に都内で開かれた自民党新型コロナウイルスに関するワクチン対策プロジェクトチーム(PT)の役員会。
出席者に配られた「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種について(案)」と題する資料には、こんな一文が盛り込まれていた。

政府はすでに複数の製薬会社とワクチンの供給契約を結んでいる。
これと矛盾するかに見える「供給契約の締結を順次進める」との文言に違和感を覚えた自民党議員は、説明役の政府担当者に次のように問いただした。

「今の段階で『供給契約の締結を順次進める』というのは、おかしい。文書作成時には気を付けてほしい」

ワクチンが十分に確保できていないという印象を与え、誤解を招くという危惧があったようだ。
だが、担当者はこの問いにはっきりと返答せず、後に一般公開された文書にも文言はそのまま残った。

議員の指摘は、なぜ聞き流されたのか。内情に詳しい政府関係者が衝撃の事実を明かす。

「実は、政府が製薬各社と結んだ契約は全国民にワクチンを行き渡らせるのに十分なものではなく、
供給スケジュールも実質的には白紙の状態です。具体的な供給契約の締結に向けた交渉をこれからも進めていかねばならない状況なのです」

契約をめぐってはPTの複数の出席者から「ファイザー社の契約書の契約内容や日本への供給時期を教えてほしい」と要望が相次いだが、
担当者は、「契約書の内容はお答えできません」と突っぱねたという。

PTの事務局長を務める古川俊治参院議員は「会合を通じて契約内容についての情報が提供されなかった」と認める。

これから供給契約を締結するのだとすると、日本は今後、計画しているとおりの量のワクチンを入手できるのだろうか。
前出の政府関係者は暗い見通しを語る。

「国民に確実に供給できるのは2月12日にファイザー社から成田空港に届けられた第1便の約20万人分だけで、それ以降は不透明です。
つまり、政府はワクチン確保に失敗している。G7でワクチン接種を開始できていないのは日本だけですから、
日本の交渉と契約がいかにいい加減だったか、ということだと思います」

菅義偉首相が「感染対策の決め手」と位置づけるワクチンの確保が「失敗」とは、ただごとではない。
政府は6月末までに全国民に提供できる数量のワクチン確保を目指すとしており、これまでに3種類のワクチンについて供給契約を結んでいる。

米ファイザー社製約1億4400万回分、米モデルナ社製約5千万回分、英アストラゼネカ社製約1億2千万回分の計3億1400万回分だ。
ワクチンは1人2回接種するので、日本の人口約1億2千万人分をすでに上回る。

どのワクチンも、開発の成功や国内の承認が前提だが、額面だけをみれば全国民に行き渡るだけの十分な量を確保しているように見える。
ところが、実際にはそう簡単なものではないという。

「日本が結んだ契約は供給期限や供給量などの大枠しか定められておらず、他国が結んだ契約のように、途中段階の供給量や時期など細かな決まりがない。
そのため次回以降の見通しを立てようがないのです。それに、ファイザーとの契約は供給時期が『年内』となっており、政府が目標とする『6月末まで』の記載はありません。
現在行われているE‌U圏外への輸出規制に対抗できる条項もない。6月末までに全国民分を確保するなど『とても無理』というのが多くの官僚の本音だと思います」(前出の政府関係者)

これが本当なら、これから始まる接種は、政府の計画どおりには進まない可能性が高い。

厚生労働省などが1月に示した接種スケジュールによれば、まず、2月17日にも医療従事者1万〜2万人向けの先行接種が始まり、
3月中旬に医療従事者ら約370万人の接種がスタートする。

その後、3月下旬から高齢者約3600万人、4月以降に高齢者施設の従事者約200万人や基礎疾患のある人820万人の接種が段階的に進められる。

医療従事者や高齢者らを除く一般の国民はそのあとだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cbecb6dafc33c4c875c13f7d5cc2daedd035220a

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