ケインズ経済学 - Wikipedia
ケインズは、大恐慌に対する解決策として、二つの方策を取り混ぜることにより経済を刺激するよう説いた。
中央銀行が商業銀行に貸し出す利子率を引き下げることにより、政府は商業銀行にたいし、商業銀行自身もその顧客にたいし同じことをすべきであるというシグナルを送る。

社会基盤への政府投資は経済に所得を注入する。それによって、ビジネス機会・雇用・需要を作りだし、需給ギャップが引き起こす悪い効果を逆転させる。
政府は、国債の発行を通して経済から資金を借用することにより、必要な支出をまかなうことができる。政府支出が税収を超えるので、このことは財政赤字をもたらす。

大不況(世界恐慌)時代、古典理論(新古典派のケインズ以前の理論)は、大量失業の原因を実質賃金率が高止まりしていることに求めた。

ケインズにとって、賃金率の決定はもっと複雑なものであった。
第一に、使用者と労働者の間の交渉によって決められるのは、物々交換と違って、実質賃金ではなく名目賃金である、とケインズは論じた。
第二に、名目賃金の切下げは、法律や賃金協定によって実効性を持ちにくい。古典的理論家たちでさえ、このような困難が存在することは認めた。
賃金切り下げが不況脱出の治療法となるという考えをケインズは退けた。ケインズは、そのような賃金切下げは不況を改善するどころか、かえって悪化させてしまうと結論した。
さらに、もし賃金と物価が低落するなら、人々はそれらがさらに低下することを期待し始める。このことは、経済を螺旋降下させるに違いなかった。そのような場合、貨幣をもつ人々は、支出する代わりに、物価がより低下し、貨幣価値が上がるのを待つようになる。それは景気をいっそう悪化させる。

積極的財政政策
古典理論家は、伝統的に均衡の取れた政府財政を熱望してきた。これにたいし、ケインジアンは、そのような政策は基礎問題を悪化させると信じている。
ケインズの考えは、金融政策とともに、一度的に財政赤字を招いても、積極的な財政支出を行なえというものだった。

ケインズの展開した理論は、積極的な政府政策が経済運営に有効であることを示している。
政府財政の不均衡を悪と見るのでなく、ケインズは反循環的(counter-cyclical、景気循環対抗的)財政政策と呼ばれるものを提唱した。
それは、景気循環の良し悪しに対抗する政策である。
すなわち、国内経済が景気後退に苦しんでいるとき、あるいは景気回復が大幅に遅れているとき、あるいは失業率が長期にわたり高いときには、赤字財政支出を断行し、好景気のときには増税や政府支出を切り詰めるなどしてインフレーションを押さえ込むという政策である。
この考えは、古典派および新古典派経済学における財政政策の分析と対照的である。
財政支出による刺激は生産を活性化させることができる。しかし、これら経済学にとって、この刺激が副作用をしのぐものと信ずる理由はなかった。