毎日新聞
 富士急行(山梨県富士吉田市)は1日、山中湖村の県有地の賃貸借契約について、県が一方的に「違法・無効」としたのは不当だとして、現契約の有効性や賃借権の確認などを求める訴訟を同日付で甲府地裁に起こしたと発表した。住民訴訟に端を発した県有地の賃料を巡る問題は法廷闘争に突入し、新たな局面を迎えた。【梅田啓祐】

 甲府市内で同日、記者会見した富士急の広瀬昌訓(まさのり)常務らによると、訴訟では賃借権の確認の他、県が主張する不法行為に基づく損害賠償や不当利得返還に関する債務が存在しないことの確認も請求。県による別荘事業への不当な干渉の差し止めを求める仮処分も申し立てた。

 県と富士急は2017年3月に賃貸借契約を更新したが、「賃料が不当に安い」として南アルプス市の男性が同年10月に起こした住民訴訟(係争中)を巡り、県は対応方針を20年に転換。地方自治法に違反し、現契約は「違法・無効」と主張している。

 その中で、3年ごとの賃料改定期を4月に控えた富士急が県に賃料に関する「伺い書」を提出したところ、2月17日付で、改定手続きに応じられない旨の回答があった。仮に貸し付けが有効とされた場合に賃料は現在の約6倍の年間20億円に増やすとも通知された。

 こうした県の対応に広瀬常務は「司法判断を待たずに、一方的かつ不合理な主張に基づき、当社の賃借権を無視した対応をとる県の姿勢は極めて不当だ」と主張。県は別荘地オーナーの連絡先リストの提供を同社に求めているが、同社は26日付で提供を拒否。各オーナーには「県から何らかの通知を受けても対応しないでよい」と案内しているという。広瀬常務は「訴訟になったのは苦渋の決断で、極めて残念だ」と述べた。

 長崎幸太郎知事は1日、報道陣の取材に「公正な裁判官の立ち会いの下に冷静な議論を交わし合うことで、県有地についての適正な管理、貸し出しのあり方の正しい姿を見いだしていければと思う」と述べた。
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