週刊ポスト2021.03.07 07:00
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長引くコロナ禍の中で実施された今年の中学入試。受験生の志望校選びにも例年とは違う変化が見られるが、今年の特徴のひとつとして挙げられるのが、“伝統女子校”の人気復活だ。そこにはどんな背景があるのか──。安田教育研究所代表の安田理氏がレポートする。

仕事柄1月中旬から中学入試の出願状況をずっと追いかけています。新聞やWebサイトでコメントを求められたり、このように原稿を書いたりするからです。大手塾やテスト会社の皆さんもコメントしていますが、出願状況のデータを基に発言していますから、そんなに大きな違いはありません。

何かしら別の切り口はないだろうか。そんなことを思いながらデータを眺めていて、あることに気づきました。ほとんど意識されていない切り口だと思います。

校名に「創立者の名」がつく8つの女子校
突然ですが、都内の学校で校名に創立者の名前がそのまま使われている学校を挙げてみてください。ヒントは「女子校」で、男子校にはありません。共学校も、かえつ有明(元は嘉悦女子。2006年から現校名)の1校のみです。

跡見学園、大妻、三輪田学園、山脇学園……くらいは浮かぶでしょうか。ほかにも4校あります。川村、中村、藤村女子、そしてここは名前とは気づかないので難しいかもしれませんが、十文字です。

女子校は小さな私塾から始まったものが多く、その時の名称がそのまま受け継がれてきています。ちなみに先に挙げた4校は明治時代の創立で、跡見学園が最も古く1875年。なんと135年以上もの歴史があります。あとの4校では中村が明治時代で、十文字、川村は大正時代、藤村女子は昭和になってからの創立です。

8校は宗教校でないことが共通点です。川村以外併設小学校がないことも共通しています。先の4校と後の4校との違いは、歴史の古さだけでなく、高校募集の有無にあります。先の4校は高校募集のない完全中高一貫校、後の4校は高校でも募集しています。先の4校は長い歴史を象徴するようにいずれも山手線内の立地(後の4校では川村がそう)です。

今回気がついたのは、先の4校のうち三輪田学園を除く3校が出願者数を増やしていたことです。

出願者数を増やした中高一貫女子3校
校名が創立者の名前の学校は、古さゆえ「時代の変化に立ち遅れている」というイメージを持たれていて、近年人気薄という面がありました。ワーキングウーマンを育てる、キャリア形成のサポートをするという姿勢を早くから打ち出していた学校が保護者の支持を受けて伸びていたからです。

それが、2021年入試では3校が前年を上回る出願者数でした。

・跡見学園/1440人→1481人
・大妻/1793人→1825人
・山脇学園/1894人→2616人
そこで、伝統女子校の魅力はどこにあるのかを考えてみました。

定番教育で「学校がどこも似てきている」
いま中学受験を特集した雑誌を見ると、「中高一貫校の教育力=大学合格力」といった記事が多く、保護者にもその影響を受けてそう思い込んでいる人が少なくありません。

また、現在、学校づくりの定番として言われているのは、グローバル教育(英語4技能、多彩な海外研修、国際交流)、サイエンス教育(ICT教育、ITスキル、プログラミングなども含む)、21世紀型教育(論理的思考力、プレゼンテーションスキル、問題解決型教育など)です。そして現在多くの学校がこれらを追いかけています。

しかし、どこもが同じようなことを取り入れているために、「学校がみな似てきている」という側面があります。受験生の保護者の中にも、「ずいぶん多くの学校説明会に顔を出したけど、どこも同じようだった」という感想を漏らす人が多くなっています。そして結局、偏差値、大学合格実績、通学の便で志望校を選ぶ現実があります。

その点、伝統校は長い歴史を経て形成された個性がハッキリしています。

コロナ禍で「知名度高い学校」に出願集まる
今年の受験生はコロナの影響で合同相談会がほぼなく、学校を訪れる機会も激減しました。例年なら学校に足を踏み入れて、わが子に合う、合わないという、いわゆる相性を判断できたのですが、それが十分にできませんでした。

合同相談会があれば、視野に入っていなかった新たな多くの学校に接触する機会が生まれるのですが、それがなかったために知名度の高い学校に出願が集まったという動向が見られました。それが伝統女子校に有利に働いたという面は確かにあります。

(以下リンク先で)