岐阜新聞 2021年03月08日 10:02

 岐阜県の東濃や中濃地域を中心に、梅雨(6、7月)に入ると毎年大量発生する「クロバネキノコバエ」。網戸の目をすり抜けて室内に侵入し、目や口の中に入り、過去には学校給食に付着していた事例もある厄介な"難敵"だ。新型コロナウイルス対策で換気が必要な中、県は2021年度、生態や発生源などの解明に向け、初めて調査に乗り出す。

 「息子の目が充血して、口の中に何度も入り込む。洗濯物にも大量に付着して本当に困る」。子ども2人を持つ会社員の女性(42)=多治見市=は、長年の切実な思いを口にする。昨年からは学校など換気が必要な場所では窓やドアを開けなければならず、コロナ対策との両立が求められ、対応に苦慮していた。

 クロバネキノコバエの体長は1、2ミリ。成虫の発生条件は気温30度、湿度70%程度とされ、早朝から午前中に発生しやすい。難敵である理由は生態と発生源、そして正確な種類が特定できていないのが要因とされている。

 県によると、クロバネキノコバエ科は2千を超える種類があると言われており、多治見市内で採取された種類と、静岡県で発生した種類とは同種または近縁種であると推測されている。だが、市内で見つかっているクロバネキノコバエはほとんどが雌であり、雄が発見されていないため正確な種の特定ができていないという。発生源も畑や山の腐葉土、プランターなどと言われているが、詳しくは分かっていない。

 県の担当者は「判明できていない部分が多く、何を対策すれば良いのかが分からない」と頭を抱える。

 2010年ごろから多治見市や可児市、関市などで発生情報が寄せられた。可児市では学校給食のパンに付着していたケースや、関市の給食センターでは調理場で大量に見つかった。岐阜市でも発生事例があるほか、アレルギー症状などの健康被害の報告もある。

 県は21年度一般会計当初予算案に調査費300万円を計上し、研究機関に委託し、クロバネキノコバエの種の特定、発生源、発生しやすい環境、殺虫剤などの効果について調べる。12年から調査を進めている多治見市などとも連携して調査をする。県の担当者は「解決に向けて、着実に調査研究を進めたい」としている。

https://www.gifu-np.co.jp/news/20210308/20210308-50749.html
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