https://kahoku.news/articles/20210307khn000016.html

東日本大震災直後に創刊された釜石市の地域紙「復興釜石新聞」を発行する釜石新聞社は6日付の紙面に社告を掲載し、
今月末で廃刊すると発表した。社告で「市の人口減に伴う形で発行部数が徐々に減少。これ以上の継続は困難と判断」と説明。
「震災からちょうど10年を区切りに廃刊の形とさせていただく」と理解を求めた。
 
同社によると、部数の減少による収支の悪化に加え、社員の高齢化も大きな理由。
創刊以来の10年間で新規採用がほとんどできず、現在の社員10人のうち7人が60歳以上で次世代への継承が進まなかったという。
 
同紙は震災で廃刊した地域紙「岩手東海新聞」の元社員らが、復興関連の情報やまちの話題を被災者にきめ細かく伝えようと、
震災の緊急雇用創出事業を活用し2011年6月に創刊した。
 
当初は市内全世帯を対象に約2万部を無料で配達したが、14年11月、有料紙として独立。
毎週水、土曜にブランケット判4ページを発行してきた。
 
しかし、新型コロナウイルスの影響で地域ニュースが減り、高齢社員への感染防止の配慮もあって昨年4月に臨時休刊。
5月に復刊した後も発行回数は週1回となった。発行部数は有料化当初の5000部から4000部弱に減少した。
 
社員10人は全員解雇となる。編集長の川向修一さん(68)は「復興に向かって進む被災者の日常を書き続け、
一人でも多くの顔を紙面に載せようと努めてきた。ネットで情報を取れない高齢者が大勢いる中、申し訳ないが、
10年間精いっぱいやった。勘弁してほしい」と話した。
 
野田武則市長は「混乱の中で身近な情報を届けてくれた。被災者と思いを共有する復興新聞のおかげで前を向けた市民はたくさんいる。
発行を継続してほしかった」と惜しんだ。