※時事通信

東京電力福島第1原発事故に伴い帰還困難区域に指定されている福島県飯舘村の長泥地区では、除染土を使った農地で、野菜や花を栽培する実証事業が行われている。環境省は、除染土を農地造成や公共工事に再利用する計画を掲げるが、安全性を懸念する住民から反発も出ている。

「実証事業の結果、安全性をしっかり示すことができた」。昨年12月、飯舘村で開かれた会合で、環境省の担当者は胸を張った。
 
放射性セシウム濃度が1キログラム当たり5000ベクレル以下の除染土のみで、インゲンとキャベツを栽培。収穫物の放射性セシウム濃度はそれぞれ同0.4ベクレル、同1.6ベクレルと、国の基準値(同100ベクレル)を大幅に下回った。
 
環境省は、除染土の再利用を通して最終処分量を減らす構想を描いており、最大99%が再利用可能と見積もる。中間貯蔵施設で保管する膨大な廃棄物を、全て県外に搬出して処分するのは現実的でないとの事情が背景にある。
 
ただ、実証事業は県内2カ所でしか実施されておらず、県民からは「事実上の県内最終処分」との声も上がる。同県二本松市などでは、住民の反対運動によって計画が頓挫しており、今後の広がりは不透明だ。
 
飯舘村から福島市に避難している女性(70)は、「安全だと言われても抵抗感がある。他県で再利用事業を受け入れるところなどあるのだろうか」と先行きを案じた。

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2021年03月09日13時32分
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