【ベルリン時事】原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は9日、
東京電力福島第1原発事故について、被ばくを直接の原因とする健康被害が、識別可能な水準で確認されることは
今後も「考えにくい」とする報告書を公表した。

周辺地域で甲状腺がんと診断される子供が増えているのは、被ばくの影響でなく、広範なスクリーニング検査の結果とみられるという。

同委員会は甲状腺がんに関して「子供や胎児を含めあらゆる年代で、被ばくによるがんの増加が確認されることは考えにくい」と指摘。
診断例が増えているのは「高精度のスクリーニングにより、甲状腺の病変が従来考えられていたより多いこと」が判明したためだと説明した。

また、原発作業員の白血病やがんへの罹患(りかん)率が増加する公算も小さいと分析した。
周辺自然環境については、放射線量が高い一部地域の植物や動物に一定の影響が見られるものの、
広範な影響を及ぼした可能性は小さいとした。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021030901138&;g=int

福島原発事故、「がん増加する可能性は低い」…国連科学委が論文や調査から見解
https://www.yomiuri.co.jp/science/20210309-OYT1T50297/
報告書は福島第一原発事故の歴史的評価とされ、各国政府が被曝管理に生かす基礎資料となる見通し。

同事故を巡っては、チェルノブイリ原発事故で1万9000人超の子供が甲状腺がんになったことから、
福島県が事故当時18歳以下だった約38万人を対象に甲状腺検査を実施。252人ががんやその疑いと診断されたが、
その原因について県の専門家部会は「放射線の影響とは考えられない」と結論付けた。

今回の報告書も同様の見解を示し、治療しなくても死亡などに至らないタイプのがんを高精度の検査機器で見つけた「過剰診断」の可能性があると指摘した。


甲状腺検査の過剰診断「知識普及に工夫必要」 福島医大国際シンポ
https://www.minyu-net.com/news/sinsai/news/FM20210214-585421.php
甲状腺検査を巡ってはこのほか、インペリアル・カレッジ・ロンドン(英国)のジェリー・トーマス教授が、英国からオンラインで基調講演した。
旧ソ連チェルノブイリ原発事故の健康影響に関する研究に携わるトーマス教授は、福島で見つかっている甲状腺がんについて、
「チェルノブイリで見つかった甲状腺がんとは、年齢分布が違っている」と指摘。大規模な集団検査の結果見つかっており、放射線の影響によるものではないとの考えを示した。