千葉市中心部の空洞化に歯止めがかからない。駅ビルのリニューアルなどでにぎわう千葉駅とは対照的に、千葉銀座商店街の周辺は人通りが減り、空き店舗も目立つ。官民挙げた活性化策も十分な効果が出ているとはいえない。21日投開票の千葉市長選を前に、現状と課題を探った。

千葉銀座は「歩けば肩がぶつかるほどだったが」
 県庁などの官公庁街から北に向かって伸びる千葉銀座商店街。コロナ禍も相まって昼時でも歩く人は少ない。70年以上続く落花生店「福井商店」を経営する福井晶一さん(64)は「店を開けても赤字ですが意地ですよ」と話す。

 バブル時代から再開発が進み、一部区画では貸しオフィスを備えた大型ビルが並ぶ。一時は東京の企業も事務所を構えたが、景気悪化に伴い転出が相次いだ。2016年に商店街の一角にあったパルコの閉店が追い打ちとなった。

 店をたたみ、大家として不動産業に転身した店も少なくない。福井さんは「商店街の顔になるような店がなくなった」と話す。

 北に進んだ栄町通り商店街も空き店舗や駐車場が目立つ。旧国鉄千葉駅と県庁を結ぶ動線にあったが、1963年に駅舎が現在地に移ったことで一変した。「歩けば肩がぶつかるほどの人出だったが、見る影もない」。50年近く栄町の飲食店で働いてきた店主の男性(68)は嘆く。

 栄町では歩行者天国に屋台を出す「楽市バザール」や、千葉大生と街のガイドマップをつくるなどして再生を狙った。だが、「一瞬の集客はできても盛り上がりは長く続かない」と男性は語った。

「商店街に金ばらまくだけでは…」
 16年に改装されたJR千葉駅には、改札内商業施設「ペリエ千葉エキナカ」や駅ビル「ペリエ千葉」がオープン。一方、近郊は大型商業施設の閉店が相次ぎ、跡地はマンションになったり、その計画が進んだりしている。

 人の流れの明暗ははっきりしている。ちばぎん総合研究所によると、千葉駅リニューアル前の16年10月とコロナ禍前の19年末の滞在人口の増減比は千葉駅周辺が15%増に対し、旧パルコ周辺は9・6%減だった。

 対策がなかったわけではない。市は千葉神社周辺の公園整備、商店街の歩道改修、市美術館のリニューアルなどでまちの回遊性を高めようとしてきた。千葉商工会議所も店主を講師に店内でお客さん向けの「まちゼミ」を開き、店主の顔や人となりを通じて魅力を伝える取り組みをしている。

 多様な仕掛けにもかかわらず、人が戻らないのは、個人店舗が「新規参入」するハードルの高さだ。

 千葉銀座商店街もある千葉市中央区の中央地区にあるホテル。コロナ禍で立ち退いた半地下部分の飲食店スペースに募集をかけているが、坪単価は月5千円。店舗面積から単純計算すると月30万円以上の家賃支払いが必要になる。

 ちばぎん総研の観音寺拓也主任研究員は「以前のように商店街に金をばらまくだけではあまり意味がない。行政は新しく店を開きたい人のチャレンジを後押しし、熱意ある人が挑戦しやすい環境をつくることが大切だ」と話す。

でも、人気店はある 店主に聞くと
 千葉銀座商店街にも若い女性やカップルが集う店がある。カフェ「呂久呂」では、陶芸カップで自家焙煎(ばいせん)のコーヒーを飲みながら、ゆったりと過ごす客が目立つ。店長の野口由布子さん(50)はこの商店街で育ち、通りを見てきた。

 近所には官民複合施設「きぼーる」がつくられたが、集客面での効果は乏しい。野口さんは大型マンション建設で期待される消費効果にも懐疑的だ。施設による活性化は時代に合わないといい、「地域の公園を芝生にするなど憩える場所を増やすほうがいい。駅前とは違う魅力を持つまちになれば、いろんな人に来てもらえる」。

 中央地区にあるハンバーガーショップ「パントリーコヨーテ」は8日、新装開店した。開店は12年前。人気店になり、コロナ禍でも売り上げは大きく減らなかった。鉄板で焼く本格的なハンバーガーの味だけでなく、鉄板を張り巡らせた店の外装はレトロなアメリカを意識したという。

 立地は街の中心地とはいえないため、「わざわざ足を運んでくれる独自性」を追求してきた。店主の福永剛さん(49)は「自分たちの魅力を突き詰めていくしかなかった。大手チェーン店ばかりのようなどこにでもあるまちを目指すのではなく、個々の店の魅力をさらに引き出せるような支援があれば、より活性化するのでは」と話す。(小木雄太、真田香菜子、重政紀元)

朝日新聞 2021年3月14日 11時00分
https://www.asahi.com/articles/ASP3F72H9P3CUDCB015.html?iref=comtop_7_04