新型コロナウイルスの影響で地方への移住に関心が高まる中、四国カルストの山間にある人口約3400人の高知県梼原(ゆすはら)町が全国の自治体から注目を浴びている。リノベーションした空き家に月1万5千円で住める低額の家賃や移住後の手厚い支援も好評だ。町の移住定住コーディネーター・片岡幸作さん(69)に人気の秘密を聞いた。

 ――移住の相談が梼原町に殺到しています

 2014年度に94件だった移住希望者の相談件数が、18年度には235件まで増えました。その8割以上が県外からでした。

 自治体からの問い合わせも増えています。昨年は京都府を始め、熊本県、宮崎県、徳島県の市町村など約15自治体から職員が視察に訪れました。特に聞かれるのは、空き家を使った移住促進の取り組みです。

 ――なぜ空き家を活用しているのですか

 梼原町では13年度から、町が空き家を10年間借り上げて管理する取り組みを始めました。町内に約200軒の空き家があるので、使わない手はありません。台所や風呂、トイレなど水回りを中心に改修します。整備した50戸のすべてに入居していただいています。

■ほかの自治体でもまねできる? 「問題は…」

 ――なぜ月1万5千円で貸し出せるのでしょうか

 空き家の改修費用は、国や県の補助金を差し引けば最大約160万円になるよう上限を決めています。月1万5千円で10年間貸し出せば、家賃収入は計180万円。長期的には町の負担が実質ゼロになります。

 ――他の自治体でもまねできますか

 制度としては可能です。問題は、空き家を家主から借りられるかどうか。

 家主は知らない人に家を貸したくないし、家財の搬出がめんどくさいなどの事情を抱えています。家主の家に足を運び、長い目で見れば得すること、このまま放置すればもっとひどい状態になることを説明しています。改修されたきれいな家が町のあちこちに並び始めたころから、貸し出したいという人が増えました。

 ――片岡さんの仕事は

 移住希望者が町に相談すると、まず私が応対します。現地に来ていただければ町内を車で案内します。

 移住後は24時間365日、何かあればいつでも電話をかけていいですよ、と言っています。スズメバチの駆除や天井裏のムササビを追い払うなど、田舎ならではの困りごとはたくさんあります。

 ――「片岡さんがいたから移住を決めた」という町民の声を聞きました

 絶対に梼原に来てくだい、と強く勧め過ぎないのが良いのかもしれません。田舎には都会にない近所付き合いのルールがあります。冬は雪が積もるし、交通アクセスも悪い。現実を知ってもらい、それでも来たいと思う方には一生懸命手伝います。

朝日新聞社 2021/03/14 15:30
https://www.msn.com/ja-jp/news/money/%E6%9C%881-5%E4%B8%87%E5%86%86%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%83%8E%E3%83%99%E7%A9%BA%E3%81%8D%E5%AE%B6%E3%81%8C%E4%BA%BA%E6%B0%97-%E5%8B%A7%E3%82%81%E3%81%99%E3%81%8E%E3%81%AA%E3%81%84%E6%8B%85%E5%BD%93%E8%80%85/ar-BB1ez8lJ?ocid=entnewsntp