世界肥満学会は3月3日、「米ジョンズ・ホプキンス大学やWHOのデータ(160カ国以上)を分析したところ、
肥満者が成人の半数以上を占める国は、そうでない国と比較して、新型コロナウイルスによる死亡率が10倍高く、
世界の新型コロナウイルス死者約250万人のうち、9割近い220万人が肥満者の多い国々に集中していることがわかった」ことを明らかにした。

肥満者が40%未満の国はすべて、新型コロナウイルスによる人口10万人当たりの死者が10人以下にとどまっている一方、
肥満者が50%を上回る国の死者は人口10万人当たり100人を超えていた。

世界で最も死者数が多い米国における肥満者は人口の4分の3近くを占めている(米疾病対策センター(CDC))。

世界肥満学会の報告を受けて、肥満の割合が世界で6番目に高い(26・9%)英国では、政府が約150億円規模の肥満対策を打ち出した。

肥満が新型コロナ感染症のリスクファクターであることは広く知られているが、そのメカニズムが徐々に解明されてきている。
肥満者は糖尿病を患っている割合が高いが、ロシアの研究者は今年2月、糖尿病患者の死亡率の高さの原因を解明する論文を発表した。

それによれば、赤血球(へモグロビン)は通常4つの酸素と結合しているが、
糖尿病患者のヘモグロビンはグルコースと結合することが多く、多くの酸素を体内の各細胞に供給できないことから、
新型コロナウイルスに感染すると低酸素症に陥りやすいという。

前述の世界肥満学会は「肥満者は優先的にワクチン接種を受けるべきである」と主張しているが、
イタリアの研究によれば「肥満者はファイザー社製のワクチン接種後の抗体反応が弱い」ことが判明した。

優先接種を受けたとしても肥満者の死亡リスクは高止まりするのである。

肥満という属性は自らだけではなく、他者へのリスク要因にもなる。

米ハーバード大学等が2月中旬に公表した研究結果によれば、「多くに感染を広げる『スーパー・スプレッダー』は
小さな呼吸器飛沫を大量に吐き出す性質を持っており、肥満者、特に高齢の肥満者にその傾向が強い」としている。

「高齢」は「肥満」とともに新型コロナ感染症のリスクファクターだが、感染拡大の原因にもなっているのである。

ドイツ・ハンブルク大学病院付属の法医学研究所の新型コロナ関連死亡者の解剖結果によれば、
「元気だったのに、コロナのせいで亡くなった人は、一人もいなかった」という(3月5日付現代ビジネスオンライン)。死亡者の平均年齢は83歳である。

これらの事実からわかることは、肥満者と高齢者が多い先進国で新型コロナ感染症の被害が大きいということである。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/03170600/?all=1