diamond 3/17(水) 6:01

 前回の連載後、「“クレーマーにこちらから質問して良い”という情報自体が新鮮だった」とご感想をいただきました。クレーム対応というと、防戦一方、ただ時が過ぎるのを耐え忍ぶだけというイメージがあるかもしれませんが、実際は従業員側から発言(質問)しながら実態を把握することもよくあるケースなのです。

 クレーマーと激突しないように上手にコミュニケーションを取るには、「相手の真意は何なのか?」「悪意がある(ブラックである)のか」など、クレームの実態を見極めることが重要になってきます。

 そこで、今回はクレームの実態を見極めるための“質問力”について紹介します。

● 警察官時代の「職務質問」で学んだ 正しい「質問」の方法とは?

 「クレーマーに対して毅然と質問などできない」「何か言ったら、逆に火に油を注ぐのではないかと不安になる」

 相手のクレーム内容や気持ちが把握できない“グレー”な局面のクレームは、誰しも困惑してしまいます。こうした局面でクレーマーに「異物や混入した虫の写真をネットに投稿する」などと言われれば、担当者はパニック状態に陥ります。

 クレームの実態を見極めようとするとき、相手との「距離の取り方」や「ピントの合わせ方」に苦労するかもしれません。私もクレーム対応を始めた当初は、その感覚がなかなかつかめませんでした。しかし、警察時代の職務質問(職質)の経験が生かされたのです。

● 「話が聞きたいのなら令状持ってこいや!」 新米警察官の失敗談

 私が警察官になりたての頃、実際にあった失敗談をします。

 ある日の110番通報「アパートの騒音苦情」で現場に赴き、少年(16〜17歳)に名前を尋ねたところ、逆に追い込まれてしまったのです。

 「なんで名前を言わなあかんのや!!」

 職務質問を行うつもりだった私としては、逆に質問されることを想定しておらず面食らいました。しかし、少年のふてぶてしい態度に腹を立てる間もなく、次なる二の矢の一言でとどめを刺されました。

 「話が聞きたいのなら令状持ってこいや」

 その一言とともに閉められたドアの前で、私はなすすべがありませんでした。

 いくら質問を繰り出して名前を確認しようとしても、相手が耳を傾けなければ強制力もなく、文字通り「話にならない」手詰まり状態だったのです。

● 「なにしてんのー?」 「達人」の職質は雑談だった

 そんな、悩める新米警察官だった私が、「職質の達人」である先輩と同行する機会がありました。

 先輩は、かなりユニークなキャラクターの持ち主で、ゆったりとした口調。我が道を行く、まさにマイペースな天然タイプ。しかし、職質で驚くほどの手柄をあげ表彰されていました。

 「職質になると、普段のゆったり口調から一変し、バシバシと怪しい人を見極めていくスゴ技が見られるのでは」と期待していたのですが、実際は私の思惑とは裏腹、完全に肩透かしを食ってしまいました。

 先輩は穏やかな口調で、誰かれなしに話しかけるのです。

 「なにしてんのー?」

 職務質問とは思えない雑談のような感じで。

 深夜、たむろする少年たちに「何時まで、うろついているんだ!」などと、いきなり結論から入る、100点を目指す職質ではなかったのです。私が勝手に思い描いていた敏腕警察官の雰囲気とはかけ離れていました。

 しかし、そんな先輩と同行して職質を繰り返しているうちに、スルスルと先輩の問いかけに応える人の多さに気づくと、自分の大きな間違いにも気がつきました。

 私は、結果を急ぐあまり、追い詰めるように矢継ぎ早に、相手の嫌がる質問ばかりしていたのです。それでは、入り口で相手にブロックされてしまいます。核心に迫ろうとして質問を繰り返し、相手の話が脇道へそれそうになると、話の腰を折る。こちらが聞きたいことにしか頭が回らず、ひとりで焦っていたようです。

 職質が苦手だったのは、自分の立場ばかり考えて不審な点を突こうとする焦りや、余裕のない振る舞いを、相手に見極められていたからです。

 クレーマーと対峙(たいじ)するときも同じです。形勢を逆転しようと、核心を突く質問や、相手の理不尽な点を追及しても状況は何も変わりません。

● クレーマーへ質問をする前に 「おうむ返し」で声を出すべき


(エンゴシステム代表取締役 援川 聡)
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