※HARBOR BUSINESS Online

いまネット上で「台湾産パイナップル(鳳梨)」が大きな話題を呼んでおり、入荷したスーパーでは売り切れが続出しているという。

果たして一体何があったのか、そして台湾産パイナップルは何処で買うことができるのか――。

◆世界を駆け巡った「パイナップル」をめぐる中台対決

事の発端は2月26日に遡る。
 
この日、中国が突然「3月1日から台湾からのパイナップル輸入を停止する」と発表したのだ。

中国は台湾産パイナップルの一番の輸出先であり、ここ数年は全生産量の約1割(約4万トン以上)が中国へ輸出されるほどだった。中国当局は「台湾産パイナップルから害虫が検出されたことによる防疫のための禁輸」だとしているが、台湾は「昨年害虫対策を強化したばかりであり、また昨秋以降に全く害虫は検出されていない」としたうえで、「中国政府の新型コロナウイルスの対応を批判した台湾に対する経済制裁の一環だ」として抗議。
 
それに対し、中国政府は、政府系メディア「環球時報」で「台湾政府は中国による圧力として政治問題にしようとしている」と述べ、台湾名産の果物「蓮霧(レンブ)」などの輸入も停止。さらに中国の民間企業もこれに乗じて台湾の銘菓である「パイナップルケーキ」の輸入をキャンセルするなど、対立はさらに深まることとなった。

実は、中国は昨年もオーストラリア政府が中国の新型コロナウイルス対応を批判したあとに同国の牛肉やワインなどに対して輸入制限や関税の追加措置などを行ったばかり。
 
世界中で中国への新型コロナウイルス対応批判が相次ぐなか、こうした経緯もあって中国の「禁輸による経済制裁」というニュースは世界中を駆け巡り、逆に「台湾産パイナップルの存在」を全世界にアピールするものとなった。

とくに日本ではコロナ禍で「台湾ロス」を感じる国民も少なくないなか、この春は東日本大震災の発生から10年目であり、多くのメディアなどで当時の台湾による支援が取り上げられたこともあって、「今度は台湾を支援する番だ」として台湾産パイナップルの買い支え運動が起きることとなったわけだ。

◆かつては台湾を支える産業だった「パイナップル」だが……

さて、「支援」とはいえども、これほどまでに台湾産パイナップルが人気となっているのには理由がある。それはもちろん「美味しい」から。とくに近年日本に輸入されている台湾パイナップルは、多くが「金鑽パイナップル」という台湾を代表する人気品種であり、その味は折り紙付きだ。

もともと、台湾には日本統治時代(1895年〜1945年)より前から在来種のパイナップルが生息していたが、現在のような輸出用パイナップルの大規模栽培は日本統治時代にハワイ産パイナップルを持ち込むかたちで始まったものだった。

金鑽パイナップルのふるさとの1つとしても知られる台湾南部・高雄市大樹区の台鉄屏東線九曲堂駅前には台北出身の台湾人・葉金塗氏が1925年に設立した台湾鳳梨工場の建物が保存・公開されており、当時の繁栄を偲ぶことができる。

戦前からより美味しく、そしてより台湾の土地に合うように幾度も品種改良が続けられた台湾産パイナップルは、一時は「輸出量世界一」となり、台湾経済を支える存在にまで成長を遂げた。1935年からは沖縄・八重山地方でも台湾人によるパイナップル栽培がはじまったほか、戦後も中国国民党の台湾統治から逃れた台湾人が沖縄に移民してパイナップル栽培に関わった例があり、それらが現在の沖縄県産パイナップルの源流の1つとなった。 このように長きに亘って日本と密接に関わり続けた台湾産パイナップルであったが、米国の世界的農業企業「ドール」がパイナップル生産の拠点をハワイから人件費の安いフィリピンに移したことで、徐々に世界的産地としての立場を失っていった。

2021年3月21日 15時32分
https://news.livedoor.com/article/detail/19887035/?p=1
https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/5/7/57eeb_1434_d403b56c_f3bca9d3.jpeg