米ゼネラルモーターズ(GM)は1月、2035年までに電気自動車へと完全移行するという大胆な方針を発表した。
これにより、同社が1世紀以上にわたる内燃機関の歴史から脱却することが明らかになったほか、
GMの従業員5万人の将来に暗雲がかかっていることが浮き彫りになった。
EVにシフトすることで、彼らの仕事が当初の予想よりも早く陳腐化してしまう恐れがあるからだ。

 同社は、「アメリカの経済が環境保全へと進むなか、GMも工場の労働力をゼロエミッション車製造に絞っていくことを望んでいる」という明確なメッセージを発信した。

 これは一夜にして実現するわけではない。
しかし、過去数十年間、石油を動力とする機械を造ってきた自動車産業労働者が、今後10年で別の仕事を強いられる、あるいは職を失う可能性は高まっている。

 GMやフォードといった企業の想定どおり、内燃機関から電力へと歴史的な転換が進んだ場合、
いまある「ピストンや燃料噴射装置の製造」といった仕事は、バッテリーパックや電気モーターの組み立てに取って代わられることになる。

 これらのコンポーネントの多くは現在、アメリカ国外で製造されている。
しかし、バイデン大統領にとってアメリカでの電気自動車サプライチェーン開発は、「電気自動車で自動車産業に100万人の雇用を創出する」という計画の重要な柱だ。

 それでも、自動車労働者らにとって、そうした未来は危険をはらんでいる。
電気自動車は石油自動車よりも可動部品が30%から40%少ないため、工場に必要な労働者人員は少なくなる。
さらに、自動車メーカーはEV部品をサプライヤーから購入する、あるいは部品製造専門のベンチャーを立ち上げることが多く、労働組合員が携わる仕事は低賃金にシフトする恐れもある。

 EVへの移行で最も脆弱な立場に追いやられるのは、ガソリン車とディーゼル車のトランスミッションおよびエンジンを製造する、約10万人の工場労働者だ。

 オハイオ州にあるGMのトレド・トランスミッション工場(従業員数1500名)で働くスチュアート・ヒル氏もその一人だ。
GMに入社して5年のヒル氏は、現在38歳。リタイヤまでには数十年あり、工場の先行きを不安視している。

 同氏は、「心の奥に、ある思いを抱えています。彼らは工場を閉鎖してしまうのでしょうか?」と言う。

 ヒル氏や同僚は、「GMがトレドでEV部品を製造してくれたら」と望んでいる。
しかしEV時代に、これまでと同じ規模の労働者人口が自動車メーカーに求められるのか保証はない。
2年前に発表された全米自動車労働組合(United Auto Workers、UAW)の論文には、
フォードとフォルクスワーゲンの幹部の「EVによって車両1台あたりの労働時間が30%削減される」という言葉が記されている。

 UAWのリサーチディレクターであるジェフ・ドコ氏は、「部品が少ないのだから、労働力が減るのは当然」と述べている。

 マサチューセッツ大学ボストン校の経営学准教授で、「時間の経過にともなう仕事の進化」を研究するテディ・デウィット氏は、
「私たちは移行の始まりにいるようなもの。それは、自動車産業に限りません」と話している。

 今後失われる仕事の数は、数千に及ぶと思われる。もっとも、正確なことは誰にもわからない。
そしてそれを(部分的にでも)補完するのは、電気自動車の部品や充電ステーションの建設作業、そして風力発電や太陽光発電に由来する仕事にいたるグリーン経済になるだろう。

 農機具や大型トラック、そして芝刈り機にいたるまで、製造業界の変革がこれほど広範囲に及ぶのは、
1886年に内燃機関車の商業生産が開始されて以来はじめてのことだ。

(以下略、全文はソースにて)
https://newsphere.jp/business/20210305-1/