聖火リレー、沿道規制で逆に密 スタッフも「ぼくらいる意味…」
3/25(木) 13:27配信 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/e73aca89edb70f9f02ea829ff380b3d4fa98f95e?seika2020

 せっかく来たのに聖火が見えないじゃないか――。25日午前9時。東京オリンピックの聖火リレーで、第1区間の「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)の周辺では、新型コロナウイルスの感染対策で沿道での観覧が規制されていたが、知らずに訪れる人が続出した。規制エリア外の聖火ランナーが垣間見えるポイントには100人ほどが集まり、逆に密集状態が発生していた。

 「ここは思い入れのある場所だから、どうしても聖火が見たかったのに」。同県広野町出身で現在はいわき市で避難生活を続けている無職の遠藤幸次さん(65)は残念がった。2011年3月の東京電力福島第1原発事故の際は原発の敷地内で復旧作業に当たったという遠藤さん。当時、作業の拠点となっていたJヴィレッジから毎日のように現場に通っていたといい、思い入れのある場所だった。この日は聖火を一目見たいとビデオを担いで朝一番に駆けつけたが、沿道からの応援が規制されていることを知らず、規制エリアの外から眺めた。

 県の実行委員会によると、第1区間での沿道の規制は組織委員会の判断だという。グランドスタートが無観客になったことで、会場周辺に観客が集まる懸念があったことから、区間全体の沿道での観覧が規制された。告知もしていたが、現場では知らずに訪れる人が後を絶たず、ゴール地点のJR常磐線Jヴィレッジ駅から200メートルほど離れた場所には100人ほどが集まった。「これじゃあ逆に密じゃないか」。カメラを構えた男性がつぶやいた。

 午前9時50分。車列に続いて聖火ランナーが遠目に確認できたが、集まった人たちの反応は薄かった。感染対策で声援の自粛を求められていたこともあるが、拍手を送るには遠すぎる距離だった。「走者の顔も炎も見えやしない。何のためにやったんだか。こんなんじゃ盛り上がらないよ」。遠藤さんがぼやいた。

 規制エリアの内側には観客もいないのに「密を避けて」という看板を背負ったスタッフたちが複数人配置されていた。「ぼくらはいる意味ないですよね? なんでここに配置されたんだろう?」。コロナ禍の不安を抱えた中での聖火リレー。スタッフの一人は感染対策のちぐはぐさに首をかしげていた。【川崎桂吾】