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3月19日、金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(代表撮影/共同通信)

「海外の目」を常に意識する日銀が考えた「英文タイトル」
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 日銀は3月18〜19日に金融政策決定会合を開催。金融政策を賛成多数で現状維持としつつ、数カ月かけた「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」の結果を公表した。異次元緩和がさらに長期化していくことが避けられそうにない中での、一種の態勢チェックである。

中略
>さて、今回の金融政策決定会合終了後に日銀が公表した文書は、「より効果的で持続的な金融緩和について」という題名になっていた。金融政策についての決定事項と、緩和策「点検」関連の根幹部分が、一体になったものである。

 会合結果を記した本体部分に加えて、(別紙1)「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」の基本的見解、(別紙2)「貸出促進付利制度の概要」、(別紙3)「経済・物価の現状と見通し」という構成である。展望レポート(基本的見解)の公表時のように、「点検」の結果(上記で言えば別紙1と2)は金融政策についての決定事項とは別建てのペーパーになるだろうとみていた筆者には、意外だった。

 上記文書の英語版を見ると、タイトルは、“Further Effective and Sustainable Monetary Easing” である。海外の投資家がこの英文のタイトルだけを見るなら、日銀による追加緩和が決まったのかと、誤解してしまう人もいそうである。少なくとも、AI(人工知能)によるテキストマイニングを経て自動売買するプログラムが、日銀による今回の緩和策「点検」を金融引き締め方向の措置と解釈して円買い注文などを出すリスクは、小さいと考えられる。

 実は、18年7月に日銀が長期金利の変動許容幅を拡大し、ETF買い入れについては「市場の状況に応じて、買い入れ額は上下に変動し得るものとする」と決定した際も、同じようなことが起きていた。金融政策の決定事項を記した文書のタイトルは「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」。英語版は“Strengthening the Framework for Continuous Powerful Monetary Easing”である。このときには、日銀が英語版のタイトルを先に決めた後で、日本語版のそれが決められたという話が流れた。

 日銀がこのように英語での発信に神経を使うのはなぜか。最も恐れているのは今も昔も、為替市場における円高の進行だと推測される。

 米欧の中央銀行は、新型コロナウイルス対応で強力な金融緩和を続行しており、目標水準を超えるところまで十分に物価を上げるまでは、利上げを中心とする金融引き締めには動きそうにない。

 そうした中で、仮に日銀がとったアクションが「金融引き締め一番乗り」的な「市場金利の高め誘導」だと受け取られたり、ETF買い入れからの事実上の「撤収」だと受け取られたりしてしまうと、円高が急速に進んでいく恐れがある。足元のドル円相場は、100〜110円前後のボックス圏の中では円安方向に傾いた上半分におり、日銀から見ればある程度の余裕があるものの、為替は動くときは速いので、油断は禁物である。

 長期金利の動向に関して言えば、「連続指し値オペ」創設という日銀の一手を過大なまでに評価する向きが市場の一部にあるのは、日銀からすれば実に好都合な話だろう。

 「明確化」された後の10年債利回りの変動許容幅上限は、0.25%程度。市場実勢がそれに近づいてきているのなら緊張感が強まるのかもしれない。だが実際には日銀の「点検」結果が出るよりもかなり前、2月26日の段階で、10年債利回りは0.175%でピークをつけた。…

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