コロナ禍で子どもの自殺が増えている。3月中旬に報じられた警察庁のまとめでは、昨年自殺した小中高校生は499人(前年比100人増)で、統計の残る1980年以降最多だった。うち高校生が339人(同60人増)と7割近くを占める。

 こうした状況の背景を探るため、各地の高校の「保健室の先生」である養護教諭らを取材し、計14校の実情を聞いた。すると、この1年で自校の生徒・元生徒が自殺したケースが3件あったのをはじめ、自殺未遂や虐待など、コロナ禍に追いつめられる状況が見えてきた。

■真面目で物静かだった女子生徒が……

 保健室は、命の危機をはじめ、問題を抱える児童生徒が日頃から集まってくる場所だ。養護教諭は子どもの心身両面の健康を支える日本独自の職種であり、子どもたちの何気ない話を端緒に、彼らが誰にも言えないような悩みを抱えていないか探っていく。

 関西の私立高校の養護教諭は、深刻な表情でこう語る。

「この1年で、命に関わるような案件が急増しました。自殺未遂だけで4件起こっていて、同時並行で緊急対応しているような状況です」

 特にショックだったというのがある女子生徒のケースだ。コロナ以前は真面目で物静かな子で、欠席や遅刻もなかった。

 ところが彼女が昨年8月末、自殺サイトで知り合った男性と一緒に死のうと家出した。学校が家出を把握し、本人と携帯で連絡を取れたことから事態が発覚した。幸い、自殺サイトで出会った男性とは別の遠方の男性の元へ逃げていたところを無事に保護された。

■「自分の存在を消したい」

 だが、女子生徒は再び登校するようになって1ヶ月ほどして、「大変なことが起こった」と保健室にやってきた。養護教諭が振り返る。

「妊娠していることがわかったのです。相手は自殺サイトで知り合った男性でした。男性は最初から死ぬ気がなく、性暴力が目的だったようです。その男性の行方はわかりません」

 コロナ前は表面上問題のなかった彼女が、なぜ死を願い、このようなトラブルに巻き込まれたのか。養護教諭が聞いていくと、精神疾患を抱える母親の存在があった。

 2020年度の全国の小中高校は長期休校から始まり、6月から授業を再開した学校が大半だった。女子生徒は休校中をはじめ自粛生活で家にいる時間が増え、母親からの逃げ場がないことに疲れて「自分の存在を消したい」と思いつめた、と養護教諭に打ち明けた。

 彼女の妊娠は養護教諭から母親に伝えたが、「中絶費用を払えない」と突き放された。結局、養護教諭が支援団体の協力を取り付けて費用を工面した。

 養護教諭は他校の養護教諭らと交流している実感として、こう懸念する。

「どこの学校でも命に関わるようなことが起こっているし、今後も起こりうると感じます」

 あるベテラン養護教諭は、「コロナ禍で追い詰められる高校生には二つの傾向がある」と教えてくれた。

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2021年04月04日 07時00分 文春オンライン